上 下
84 / 136
第二章

47親友の思い~リシウスside

しおりを挟む




物陰から二人を見守り心の中で安堵した。


「ようやく実ったか」

「随分と回りくどいですね」

「フィルベルト様、遅い春ですね」


私と一緒にフィルを見守る彼女たちは少し手厳しいが心配をしていたので目を瞑ろう。


「ようやく幸せになってもらえる。それが嬉しい」

「従兄に負けて悔しくないのですか」

「負けも何もないだろう」


私はずっと優しい叔父が好きだった。
本当は王となるのは叔父だったのに、父に王位を譲り、一歩下がっているんだ。


「私はフィルに幸せになって欲しい」


「殿下は本当にフィルベルト様がお好きですね」

「ああ」

王家も一枚岩ではないからな。
家族であっても完全な味方ではない。

貴族も同じだ。
叔父は誰よりも父を優先してくれた。

家族として――。


フィルも同じだ。
私の王太子という立場を慮って心配してくれた。


「フィルはずっと私の味方をしてくれた。ずっと…」

兄弟よりもずっと近い距離にいて私を守ってくれた。
彼女との婚約の時も私の心を守ってくれたんだ。


だから…

「もう十分だ。これ以上はもういい」

「まるで自分の犠牲になったと言いたげですね」

「エレーナ」

「思い上がりです」


こういう時容赦がないな。
思い上がりなんて言い方をするなんて。

「確かに自意識過剰ですね」


「君も容赦ないな」

この二人ある意味似ているかもしれない。


「誰が何時犠牲になったといったんです?」

「いや…しかし」

「あの方は誰かに命じられましたか?それともそういわれましたか」

「言ってない」


言うわけないだろう。
フィルはそんなことを絶対に言わない。

いうはずがないのだから。


「貴方は一方的すぎます。フィルベルト様の気持ちを勝手に決めつけるべきではありません」

「エレーナ・・・」

「もし私だったらこういいますね。調子に乗るなと」

本当にな。
一応私は君よりもはるか上の立場にあるんだが。

遠慮がないな、本当に。


でも本人に直接聞いたことはない。


「一度聞いてみればよろしいのに」

「そうだな・・」


いい意味でも悪い意味でも二人は型破りだ。
貴族の常識からかけ離れている。

だが、この二人のおかげで少し目が覚めたかもしれない。

ただ今は親友であり兄のような存在のフィルの幸福を願いたい。


しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。

新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

お願いですから離縁してください。やり直すことはできないので。

ネコ
恋愛
ラッセル公国の伯爵令嬢マルコットは、公爵令息エイブラハムと恋愛結婚。 愛し合っていた二人だが、ある時、とんでもない問題が起きる。 それは同盟国であるナスダック王国との間で開かれた祝宴のこと。 エイブラハムが、ナスダック王国の王女シャリアと不貞行為に及んだのだ。 不貞の現場を目撃したマルコットは深いショックを受ける。 そして翌日、彼女はエイブラハムに離縁を切り出す。 しかし、エイブラハムは「一度きりの過ち」「やり直せる」と言って受け入れず。 また、マルコットやエイブラハムの両親も、両家の関係を重視して離縁を望まず。 マルコットは四面楚歌の中、離縁を成立させるため立ち向かっていく。

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます

ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね

ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

処理中です...