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第二章
36愛しの君~フィルベルトside③
しおりを挟む毎日とはいかないが時々彼女に会う日は俺の楽しみとなった。
互いに名前を名乗っていないが、クレイン家の令嬢であることが解れば名前何てすぐに解った。
キャサリン・クレイン嬢。
名前の通り美しい気品ある令嬢で、使命感が強くとても聡明だった。
「図書館に…」
「ダメです!風邪を引かれたのです」
体が丈夫ではない俺は風邪をこじらせてしまった。
図書館に行けずベッドで唸る日々が続いた。
彼女に会いたい。
「フィル」
「母上…」
「奥様、お体に障りますわ」
看病をしていた侍女が急いで止める。
母上は今朝から貧血気味で昨日も高熱だったはずだ。
ふらふら歩いていいのか?
「もう、そんな過保護だから私は何も楽しめないわ」
「奥様…」
解らなくはない。
母上の体の弱さを心配して使用人もかなり過保護だ。
父上も例外じゃない。
「最近、熱心に図書館に通っているそうね?しかもクレイン家のお嬢さんと」
「何で知っているんです」
「それはこっそり盗み見したのよ」
邸から出たのか。
体が弱いのに侍女は何をしていたんだ。
「あら、誤解のないように言っておくけど偶然よ?王妃陛下のお茶会の最中にサロンの窓から見えたから王妃陛下と探偵ごっこを楽しんだのよ」
「その後貧血で倒れられましたが」
何をしているんだ母上。
「だって女の子に興味がない貴女がようやく興味を」
「奥様はしたないですわ」
「あらそう?でもクレイン家のお嬢さんなんて素敵だわ」
聞けばクレイン家は貴族の中でも勤勉で、身分こそ高くないが国を思う心ある貴族らしい。
派閥に関しても問題なく王家に忠誠を誓いながらも穏健派だとのことだ。
「彼女は…そんなのは」
「まぁ、そうなの?残念」
何を望んでいるんだ母上。
俺がこれまで貴族の令嬢を避けていた所為で母上と王妃陛下は勘違いをしていたとか。
女性が苦手で男が好きと。
「それは流石に」
心の底から気の毒な表情をする侍女。
何だその大いなる誤解は!
断じて俺はそんな趣味はない。
ないんだ。
――なのに、女性と交流を持たない故にか。
第一俺が女性が苦手になったのには原因があるんだ。
「まぁ、女性と距離を置くようになった原因が殿下の婚約者殿ですものね」
「奥様…」
「あら、やだ…私ったら」
時期王太子候補である令嬢に対しては慎むべきなのだろうが。
俺はオレリア・ジュレイド侯爵令嬢がどうでも苦手なんだ!
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