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第二章
閑話4晒される噂④
しおりを挟む一度口に出せば止まらなかった。
オレリアの中で怒りの感情が爆発して歯止めができない状況は最悪と言えるだろう。
「何?」
「何の騒ぎだ」
今夜の舞踏会は堅苦しいものではない。
だけど礼儀を完全に無視してもいいわけではない。
参加しているのが身分が高くない者が多いが、平民でも参加できる社交の場だった。
高位貴族だけが参加できる舞踏会ならば、後から嫌味を言われる程度で済むが、逆に身分が低い男爵家、子爵家は他国の商人との渡りもあるのでこの場で悪い噂を流せば国内だけでなく国外にも悪い噂が流れる。
そんなことになったら国同士の外交問題も起きるだろう。
しかもその噂の令嬢が元王太子妃候補だったのならどうなるか解ったものではない。
「オレリア、止めるんだ」
これまで信念を持っているオレリアを素敵だと思っていた。
自分をしっかり持っている姿を誇らしく思っていたロイドは気づいたのだ。
自分をしっかりもつことと、思ったことをそのまま口にして相手を否定することは違う。
思ったことをそのまま口にするなんてことは子供のすることで、特に社交界では論外だというのに何故気づかなかったのか。
ずっと上手く言っていた。
オレリアは多くの人に好かれ慕われているのではなく、その裏でフォローをしていたからだと気づいた。
「人前でそんな事を」
「どうして私を責めるの!ロイドは私の味方なのでしょう」
「ああ、そうだ…だからこそ!」
「もういいわ!どうせ口先だけの癖に!」
「オレリア…」
ロイドはあんなにも愛しいと感じていたのに今では愛情も抱けなかった。
周りを見ることなく自分の事しか考えないオレリアは誰も見えていないし誰も愛していない。
強いて言えばオレリアが愛している自分自身。
自己愛しかないのだ。
「最低ね…」
「どこまでも自己中なの?」
「こうなってみて、キャサリン様が本当に気の毒だわ。婚約者を奪われ、貴族の矜持を傷つけられて」
「加害者は罪悪感もない最低最悪な女」
令嬢達はオレリアが既に侯爵家を追放されていることを知っていた。
だから今更怖くない。
フォーカス家は社交界で権力を失い、借金地獄状態だ。
金銭的にも厳しく、学校を卒業した後に待っているのは悲惨な新婚生活だ。
一部では卒業しないで中退するのではないかと言われているが。
「でも縁が切れて良かったのでは?」
「そうね?噂ではフィルベルト殿下がキャサリン様を婚約者に望まれているそうですもの」
「そうなれば彼女は侯爵夫人ですもの」
「何を…」
オレリアは言葉を失った。
ずっと見下していたキャサリンが雲の上の存在にいることを知らされたのだった。
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