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第二章

27温度差

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何もかも違い過ぎて私は困り果てた。

「お嬢様、大丈夫ですか」

「くっ、私としたことが」


あの後、フィルベルト様の前で倒れたそうだ。


「これまでの疲れが出たのでしょうね」

「違うわ」

完全なる知恵熱じゃない。
こんなことをしている場合じゃないのに。

幸いにも熱は下がったから問題ない。


「この私が知恵熱?三日三晩徹夜しても平気だったのに。ありえないわ。ありえない」

「血圧が上がりますわ」

「エリー、私はこの世で最も理解できないのは恋愛よ。そうよこうなったら解読するわ」


恋愛という未知の世界を克服して見せる。
思えば私は恋愛には程遠く。前前世でも乙女ゲームを進めてきたのは教え子だった。


私は教職に勤しんでいたが男女の仲に関してはからっきしだった。
独身貴族だったし。


「お嬢様、根本的に間違っております!エリーは悲しゅうございます」


「もう元気みたいだな」

「ええ、ですが…我が娘ながらなんといか」


私を心配してくれた二人は可哀想な目で見られたのだが見なかったことにした。


「病み上がりでこんなことを言うのは酷なのだが」

「何でしょう?」


お父様が真剣な表情をして問うた。
ここまで思いつめるなんて珍しいと思って私は静かに話を聞くことにしたのだが。


「実は先週、国王陛下よりフィルベルト殿下との婚約を考えてほしいとのことだ」

「は?」

「あくまで当人同士の自由だ。お前の事を考慮してのことだ」


命令ではないことから私に選んでよいとのことだ。
恐らくロイドとのことで傷物令嬢になり、加害者となるオレリアに関してもある。


私に同情的なのかもしれない。


「王妃陛下はお前を王族の血縁者とどうしても婚姻関係を結んでほしかったのだろう」

「はい?」

「でしょうね」


そんなことは初耳だわ。
私は伯爵令嬢でしかないのに何故と思ったが。


「王家に必要なのは優秀な人材と自立した者」

「伯爵令嬢であるがお前は学問を極めている。侯爵令嬢のサポートを完璧にしていたからな」


「いえ…そんなことは」


確かに社交界デビューするまで私はサポート役に徹底していた。
その後も完璧な令嬢であるために黒子になっていたのだけど、買い被り過ぎだと思うんだけど。


「王妃陛下は今の社交界、特に女性が殿方に頼り切る世を変えたいとお考えだ」

「はい…」

「オレリア嬢に関してもずっと様子を見ていたのだが…あの方はお前に頼り過ぎていた」

本人はすべて自分の努力の賜物だと思っている。
まぁ実際は努力はしていたのだろうけど、かなり不器用で抜けていた。


「だが問題は、他人の功績を自分だけの功績と考える傲慢さだ」

「それは…」

「王妃陛下はずっと前からオレリア嬢を見限っていた」


面倒見がよく慈悲深い王妃陛下はオレリアに変わって欲しかった。
だけど最後の最後で裏切られてしまったのだろう。


未熟でも努力して立派な王太子妃になって欲しいと願っていたのだから。


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