伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ

文字の大きさ
上 下
58 / 136
第二章

25アプローチ

しおりを挟む




恋愛に縁がない。
既に枯れている私は今更男の人にときめくことはない。
前世でも愛されることはないと思っていたからこそ、こういったことは慣れてない。


「キャサリン、思いから俺が…」

「え?」

「キャサリン、日よけに使ってくれ」


作業が始まり、買い出しに向かった私達。
二手に分かれて作業をすることになったのだけど、市場に買い出しに行くことになったのだけど。


重い荷物を持たせてもらえず、人込みの時はできるだけ私を避けさせて、尚且つ気温の高さを心配して上着をかぶせてくれたり、休憩の合間にカフェで飲み物を買ってくれたりと。


「いけません、お金を」

「何を言っている?男が払うのは当然だろ?」

「え?」


戸惑うことばかりだった。
対するフィルベルト様は私の行動に怒った表情をしていた。


「君はどんな扱いを受けていたか解った」

「はい?」

「重い荷物を率先して持ち、馬車の手配も自分で…しかも御者のようなこともできる。なんでも一人でこなせるようになった経緯を察すると腹が立つ」

「何を怒って…」


元から自分の事は自分でできるように教育されてきた。
自立した女性になってほしいというのが両親の願いだったけど。

「君は一度でも他人を頼ろうと思ったことは?」

「ありません」

「…そうなった原因があの二人じゃないか」

私の手を握り優しく包み込むしぐさに恥ずかしさを感じる。

「おやめください。私の手は…」


白くてすべすべの手じゃない。
傷一つない貴族令嬢の手とは異なっているのだから。


「俺は君の手が好きだ。紙の匂いをさせ、常に努力している君が」

「フィルベルトさっ…」


汗を流しているのに、どうしよう。

「常に背筋を伸ばしている君は美しいと思う一方で痛々しい」

「そんなことは…」

「俺だったらそんな思いさせなかった。君と俺が幼馴染だったら…神は残酷だ」

「ちょっ…」

綺麗じゃない私の指に触れキスをする。


この感じ、すごく恥ずかしい。
初めての感覚で、すごく恥ずかしくて胸がきゅんとしてしまう。


「あっ…あの、これはどういう状況なのでしょうか。挨拶の何かですか」


挨拶に一環として高貴な姫君の手の甲にキスをする習慣があった。
後は騎士が令嬢にする的な。


ロイドもオレリアによくしていた。

でも今の社交界ではそんな風習はなかった。
昔の挨拶だったのだけど、古い風習を大事にしている王家ではあるのか。


「キャサリン、誤解しないでくれ」

「誤解?」

「今の社交界で初対面の女性の挨拶にキスなどすれば問題になる」

じゃあ、何で?
私の手にキスをしたのは何故?


「好意を持った女性に対するアプローチに決まっているだろう」

「ええ!」


この時私は昼の時間帯。
人通りの多い場所で声を荒げてしまった。


そう、普段ならしない失態をしてしまったのだ。


しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」  そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。  曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。  当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。  そうですか。  ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?  私達、『領』から『国』になりますね?  これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。 ※現在、3日に一回更新です。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

修道院に行きたいんです

枝豆
恋愛
愛して全てを捧げたはずの王太子に新しい婚約者が出来た。 捨てられると思ったのに、いつまで経ってもその気配はない。 やばい、このままだと私がやばい。 もう死ぬしかない…そんな時に私の前に現れたのが、王太子の従兄弟だった。 「私があなたを自由にして差し上げましょう。」 悩みながらもレイチェルはその言葉を信じてその手を取ってしまった。

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...