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第二章
22第三者の不満
しおりを挟む王都を離れて好きに過ごしていた。
常に気を張っていた生活からも解放されていた。
この時期、観光客で満員のはずが、観光客は新しくできたリゾート地に足が向いているのか貸し切り状態でいたれりつくせりだった。
「お嬢様、満足していただけておりますでしょうか」
「それはもう…貸し切り何て贅沢すぎます」
このペンションの女将がジュースを用意してくれた。
「そう言っていただけてようございました。王都で痛ましい噂を耳にしまして」
「やっぱり知っていたのね」
飲食業や商人等もは特別なルートで情報を仕入れることができる。
特に女将は元は水軍ギルドの家柄だった。
「ええ、ですからこの度の事を考えると」
「甘すぎると思って?」
「はい、恐れながら」
まぁ第三者からすればそうよね。
慰謝料の請求と、それ相応のフォーカス家に打撃を与えるべきだけど。
「なんの御とがめなしとなれば、第三者はお嬢様が脅迫されている。もしくは脅されてるのか…酷い時は」
「精神を病んでいる?」
「はい…」
申し訳なさそうにしている女将。
まぁ私が第三者だったら、ありえないと思うけど。
「私はこう見えて利益を最優先にしているの」
「利益?」
「出る杭は打たれると言うでしょう?」
ただやられたからやり返すだけでは芸がないし。
後から逆恨みをされたら両親に親族にも迷惑がかかるわ。
恨んでないけど許す気はない。
「社交界というのは本当に恐ろしい場所。当人の事なんてすっちのけで噂を流すわ」
「それは…」
「私が慈悲を与えて、精神的に傷つきながらも身を引いたという馬鹿な噂が流れているの」
まぁ少しばかり策略家のような真似をしたわ。
ジュレイド前侯爵夫人は義理堅く筋を通さないことを嫌がる人。
だけど、筋を通して義を貫けば悪いようにしない。
「今回の事件は当人同士の問題。ですから情けをかけたのです…まぁ、加害者の家。特にフォーカス家は既に打撃を受けているはず」
フォーカス家は既に家が傾いている。
だけど我が家と縁を結ぶことで商人からお金を借りることができたのだ。
我が家は中位貴族であるが商人とのつながりが強い。
私の父が商人やギルドに信頼されているかしらなのだけど。
「ですが、侯爵令嬢と婚約したのなら」
「侯爵令嬢という肩書は無くなるわ」
「えっ…」
侯爵夫人は嫁姑の関係が悪いと聞く。
今回の事でどんな処分がされるか安易に想像がつく。
「侯爵家は分家筋だもの」
「そう言えば本家筋は義弟様が引き継がれていると」
「ええ」
かなり複雑な過程であるのだけど。
ジュレイド家は入り婿のである方が当主代行を務めていると聞く。
当初は王太子妃となった後に、第二子が姫君だった場合は跡継ぎにと考えられていたが、今回の事で無くなるでしょう。
「オレリアはフォーカス家に嫁いだ後に実家とは縁を切れているわ」
その時点で十分な罰を受けている。
ロイドに関しては社交界では完全に信用を失っているわ。
ゼロからの再出発になるけど、その時点でこれ以上の罰はないと考えているのだから。
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