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第二章

18逆効果

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美しい青空が広がり、視線の先には美しい景色。
その場にそぐわない会話であるけど、これで納得してくれただろう。


うん、いい感じだわ。
こんな冷酷な女を好きになるとかないわ。

きっと薔薇園での告白も気の迷いだったと思うに違いない。


――そう思っていた。


「素敵だ」

「はい?」

私の手を握るフィルベルト様に固まった。


「君の事、、もっと好きになってしまった。もっと君を知りたい」

「あの…」

さっきの言葉で何でそんな結果になる!
普通はドン引きするか、軽蔑の間差しを送る所じゃないか!


「君は貴族としての責任、そして家族と領民への愛情が強いのだな」

「いえ…そんなことは」


辺境貴族ならばこの程度は普通だ。
王都の貴族や宮廷貴族はどうなのか解らないけど。


「惚れなおした」

「落ち着いてください」


「十分落ち着いている。知らない一面をまた知れて嬉しい」

顔が近いのだけど。
何でそんな嬉しい表情をするのか。

甘い表情で愛を囁かれたら絆されそうなのだけど。


「キャサリン嬢、君は俺が嫌い?」

「え!」

好きか嫌いかと言う意味だ。

「好きです」

フィルベルト様は私に駆け引きをされなかった。
好きか嫌いかと問われた時点で嫌いじゃないなんて答えは解っている。


「ですが、私はそう言った感情はないのです」

「解っている」

「だったら何故そのような事を…空しくなるのでは」


前世の私は十分にそのむなしさを感じたんだ。
他人に同じ思いをさせたくないわ。


「キャサリン嬢はやはり優しいな。その目は俺を気遣う目だ」

「私は真面目に答えているのです」

「俺は真面目に言っている。私は君に妻になって欲しい」

「つっ‥妻…」


なんて事をさらりと言うんだ。
この時の私は冷静さを失っていた。


「君と結婚して愛し合って夫婦になって生涯を共にしたい。その思いが強くなった。君の所為だ」

「なっ!」


何で私の所為だというのか。

「君が俺の心をかき乱す…君が遠い存在なら諦められた。なのにあの男とを愛していないなんて言われたら諦めがつかない」

「そう…申されても」

「命令で無理矢理君を婚約者にしようと悩んだ。最悪の場合君を寵妃にと」

「ちょっ…寵妃」


どの国でも王族が妾を囲んでいるのは多い。
その中でも特に寵愛を受けた妾を寵妃と言うけど。


通常は結婚後に王家の愛人になる事が許されるのだ。


「だが、無理矢理君を手に入れても空しい」

「え?」

「歴代の王は強引な形で側妃を迎えて来たと聞く。その末路は悲惨なものだ」


寵妃の人生は短い。
その代の国王が崩御すれば寵妃も裁かれ追放されるのだから。


「俺は君を正式な妻として迎え、君だけを大事にしたい」


強く私の手を握り告げられた言葉はとても情熱的な求婚だった。


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