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第二章
17雲の上の存在
しおりを挟むああ、同じ場所にいること自体あり得ない。
身分違いにも程があるのに私は何故こうして二人きりでお茶を飲んでいるのか。
「こうして遠出するのは久しぶりだ。良い所だな」
「そうですね」
「君は何度も来ているのか」
「三年前までは定期的に」
家族旅行として毎年ここは避暑地として利用していた。
「いいな」
「え?」
「俺は視察に同行しても、プライベートで家族と旅行する事はない」
社交界でもあれだけ理想の夫婦と言われているのに珍しいのかしら。
「高位貴族は夫婦関係、家族関係が良くない事は少なくないからな。まぁ我が家は特殊だが…君の両親のように見合いなのに仲睦まじいのも奇跡だが」
「そうなんでしょうか」
「そう思うって事は、自然だったんだな」
思えば私の家は特別に仲が良いとは思ってないけど、家族の団欒はしっかりある。
「侍女も家族のようだ」
「エリーは、私が物心つく前からお世話をしてくれていて」
使用人と言うよりも家族のようなものだった。
「使用人は必要最低限しかしない。私は昔侍女が怖かった」
「怖い?」
「能面のように同じような笑顔を張り付けて子供ながらに怖くて逃げ回っていた」
王家となれば侍女は皆優秀で完璧すぎただろう。
高位貴族の長子は基本侍女が教育係を務めるので、愛情を欲していたのなら安易に想像がつく。
そうなるとオレリアが私に対して抱いていた気持ちに少し想像ができる気がした。
「どうしたんだ」
「いえ、少し」
「オレリア嬢の事か」
「気づかれてましたか」
言葉にしなくても気づかれるとは、恐ろしいわね。
「キャサリン嬢は優し過ぎる」
「そうでもありませんよ。婚約解消の後二人を無視していますし」
本当に優しいなら最後まで二人の応援をしていただろう。
なのに私は婚約解消と同時に完全に二人とコンタクトを取らなくなったのだから。
ある意味冷たいのかもしれないわ。
「本当に冷たいなら裁判に満ち込めるだろう。君ならできるはずだ」
「それは…」
「情けをかけたのだろう」
そんなつもりはない。
時間と労力とお金の無駄だと思っただけだ。
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「キャサリン嬢」
「私はこう見えて酷い女ですわ。両親の害になるからこそ離れた。友人を捨てたのです」
前世の二の舞をしないように私は親友も婚約者も捨てたのだから。
「私にとって婚約は家の為で、彼女との付き合いも我がクレイン家を守る手段にすぎません。私は利益で動く酷い女です」
そうだわ。
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嘘ではない。
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だって大事なのか家族。
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