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第二章
11秘密の花園
しおりを挟む校舎内にある薔薇園。
その奥にはかつてロイヤルガーデンがある。
ただし現在は手入れをされていないので誰も使っていない。
「素敵だわ…」
私は足を踏み入れた事はなかった。
でも薔薇がちゃんと咲いているのを見て笑みを浮かべる。
私は薔薇が好きだった。
前前世の頃から花の中で薔薇が好きだった。
そして前世でも、寝たきりになった時も薔薇が匿名希望で届いたのだ。
「本当に素敵だわ」
「そんなに薔薇が好きなのか」
「ええ、私には不釣り合い…え?」
私は誰と会話をしているのかしら?
振り返るとフィルベルト様が微笑んでいらした。
「あの…」
「不釣り合いとは随分だな。君には薔薇が良く似合うのに」
「はい?」
薔薇の背景が無駄に似合うわね。
殿下よりもずっと容姿が整っているからなのか。
「そんなに見つめられると照れるな」
「へ…」
「情熱的に見られると」
何を言っているんだ。
確かに見惚れてしまったのは認めるけどそんな目を?
「フィルベルト様は女性の憧れですから」
「君は?」
「え…」
「君はどう思う」
そこでなぜ私が出て来るのか解らない。
「その…美醜の好みは異なりますわ」
「じゃあ、教えてくれるかい?君は俺の事を好ましく思ってくれる?」
距離を一歩、また一歩と縮んで行く。
「他の令嬢なんてどうでもいい。君に好かれたい」
「なっ…何を」
「それなりに態度に示して来たとつもりだ。だけど君はかなり鈍いな」
そっと私の手を掴む。
「手をお話しください。お戯れを!」
人気のない場所で、私はかなりまずい状況だと察した。
「君に好かれないなら意味がない。君が好いてくれるなら俺は…」
「フィルベルト様!」
手を引かれそっと耳元で囁かれる。
「キャサリン嬢、君は美しい」
「ひゃっ…」
「誰よりも聡明で凛として美しい。君程薔薇が似合う女性はいない」
ドクンドクンと心臓の音が煩い。
何で私はこんな…
こんなに頬が熱いの。
「その顔、自惚れていいかな?」
髪に触れられた手が優しい。
どうしてそんな優しい目で私を見つめるの?
そんな優しい手で私に触れるの。
「キャサリン嬢…君が好きなんだ」
声が出せない。
息を飲んだ私しは顔を上げる事ができない。
「顔を上げてくれ」
「困ります。見ないでください」
普段の鋼の精神はどうした私。
冷静になれ!
そう思っていてもできなかった。
これが乙女ゲームの力なのか!
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