上 下
43 / 136
第二章

10友人

しおりを挟む



私の周りはどうしてこうも人の話を聞かないのか。
そして暴走する人が多いのか。


「それで、私は新たなポーションを考えているのですが」

「そうですか」


嬉しそうに早口で量産型のポーションについて長々と語る。
聞き手に回るのは得意だった。

これまでオレリアの話し相手になり。
ロイドの愚痴を聞いていたから慣れている。


「予算は十分足りているのに。難色を示している頭の固い連中が多くて」

「サンプルを作ってそれを冒険家の生徒に試した方が確実なのでは?」

「え?」

高価なポーションだけでなく下級ポーションを増やしたいが、中々採用されない。
それにポーションは貴族に最優先に売られ、魔力の低い下級貴族や平民にはなかなか渡らない。

中には貴族が高値で転売をしているそうだ。
しかもそのポーションは粗悪品だったりもするのだから質が悪い。


「貴族は希少価値の物に弱い。そして新しい物好きです」

「…と申しますと」

「学園内には元平民の生徒や、身分が高くない商人貴族がいますので。彼等にそのポーションを実際に使ってもらって宣伝…もしくはポーションをポーション以外に使えばよいかと」


ポーションとは回復薬であるけど。
別に戦闘時のみ以外にも使えるはずだ。

「例えは美容に良いとか、不眠症の方の為の製品にするとか」

新しいポーションを作っても製品が売られるまで時間がかかる。
ただし化粧品、紅茶などならばポーションほど時間はかからないのだから。


「成程、その手がありましたわ」

思いついたようにポンと手を叩くエレーナ様は鞄から分厚い本を出し、見開きのページには薬草が貼られていた。

「これですわ!ありがとうございます。今から行きましょう」

「は?」

「何を呆けておられてますの?言い出しっぺなのですから」

手を引かれ何故か私はエレーナ様に研究所に連れていかれてしまった。



「さぁ、今から私と国の未来の扉を開きますわよ」

「いや…私はポーションの制作は素人で」

「研究に関しては問題ありませんわ。意見をバンバン出してくださいませ」

いや、言い回しが――…


「さぁ、まずは一番のお手頃な実験から始めますわ」


私はこの時知らなかった。


エレーナ・アーストレイはまどっどサイエンティスト裏で呼ばれている事に。


「私と同盟を結びますわよ。腹心の友」

「もうどうとでもなってください」

新たな友人はかなりの科学オタクだった。


しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...