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第二章
9聡明なる令嬢
しおりを挟む現在も魔力こそがすべてだと考える貴族は多い。
しかし、十年前から錬金術の重要性を世に知らしめた学者がいた。
魔法よりも錬金術の歴史は古い。
しかし、魔力絶対主義の貴族は才能の無い者の悪あがきと考えている。
私は魔力が低いからこそ魔道具や錬金術は必須だと思っているのだが。
「薬草に関心がおありなのですか」
「はい…私は魔力がほとんどありませんし」
じーっと睨むような目で見られている。
面識はほとんどない、噂では彼女は大変気難しいとされている。
コミニュケーションを取るべき?
でも研究者は余計なお喋れりを好まないと言われているのだから。
「近年、国の財政は圧迫されています。ですが我が国は他国と異なり錬金術の先進国でもありますので…もっと国が援助してくだされば国も豊かになると」
「そう…ですか」
しくじったわ。
もっと言い回しを考えるべきだったかしら。
これでは月並みな言葉だわ。
元教師として失格だわ。
「魔法絶対主義の時代はあと十年もすれば終わりますし。今後は技術の時代かと」
嘘は言っていない。
私が病死する前から錬金術は他国でも話題になっていた。
それに魔法よりもコスパが良い。
「魔法を使えるのは国の民の三割でしかありませんし。どう考えも無駄が多いかと」
魔法は才能ある者が精霊と契約して生み出す。
しかもその魔法に限りがあるし術者の体力も消耗するし、最悪の場合やりすぎれば。
命を落としかねない。
「大昔とは違う…ひぃ!」
いきなりすごい力で肩を掴まれる。
地味に痛いなこれ。
「素晴らしいですわ」
「は?」
「その通りです」
どうやら気分を害しているわけではなさそうだ。
「あっ、あの…」
「学園では国の行く末を案じれる貴族はいませんわ。本当にこれだから温室育ちの馬鹿は困ります」
「滅多な事はお控えになった方が」
「大丈夫ですわ、この図書室には滅多に人は来ませんし」
そう言う問題で済ませるのか。
後に賢者の姫君と謡われる令嬢の言葉とは思えなかった。
「馬鹿が多すぎる宮廷貴族だけでなく高位貴族も国の未来をまるで考えずに魔法魔法と。ポーションの研究にどれだけのお金がかかるか。もっと考えるべきなのです」
「そーですね」
ああ、私は墓穴を掘ってしまった。
そして気づかなかった。
科学者、研究者とは孤独な人間である事を。
誰にも理解されず共感してくれない中戦い続けている事を。
逆に共感してくれる人間を探しているという事を。
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