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第二章
6涙と誤解
しおりを挟むずっと我慢していた。
私は心を殺して我慢して来たから涙なんて枯れていると思った。
「キャサリン様…私達」
「好き勝手な真似を」
私の噂話で笑っていた生徒は罰の悪そうな表情をするが。
「最低だな」
「フィルベルト様!」
「何処まで無神経なんだ。君達はそんなに他人の不幸が楽しいのか」
「これが社交界を担う人間かと思うと情けない」
彼女達を睨みつける二人を筆頭に他の生徒も冷たい視線を向ける。
風紀員の人達だった。
「黙って聞いていれば、好き放題言っている貴方達は何様なの?」
「他人を追い落とす為にそんな真似を」
「生徒会副会長を中傷するとは命知らずな」
私を庇ってくれた彼等は勘違いをしているので心苦しい。
私は決して悲しくて泣いているのではない。
むしろ逆だ!
この涙は過去の苦労を思い出し、そして完全に決別できる。
ようやく未来に希望を持てた安堵のうれし泣きであって悲しいわけじゃない。
涙を止めたくとも簡単に止まらない。
だけどようやく涙を止めることができず。
「ぐずっ…」
「キャシー様をこれ以上泣かさないでください!最低です。人の嫌がる事はしてはいけないとお母さんにならな解ったんですか!幼児でも解ります」
そしてそこ!
お願いだからいい加減に黙りなさい。
状況が悪化しているのに何故気づかない!
「すまないキャサリン嬢、俺が傍にいながらこんな事に」
「詫びるべきは私もだフィル。もっと配慮すべきだった。君は毅然としているから」
「辛いに決まってます。微塵も愛情を感じてない相手との無理矢理の婚約でもあんな下衆の極みの男と婚約して時間を奪われ、今後屑男の婚約者だったなんて恥ずかしいですから」
本当にね。
ここまで言ったら後で痛い目に合うわよ。
前世でもこんなに問題児だったかのかしら?
ゲーマーじゃないから極めていないから良くわからないけど。
これが流行の天然ヒロインというのか?
ここまで来たら天然ではなくお馬鹿ヒロインなのだけど。
王立学園の入試に好成績で合格した新入生代表。
しかも特別クラスに入る事が許されたのだから頭はいいはず。
なのだけど。
「皆さんは最低です!ただでさえ傷ついているキャシー様を傷つけ苛めるなんて!これは今度の生徒会の案件にすべきです」
「ちょっと待って…」
「私達はそんなつもりは」
「じゃあどんなつもりかこの場で三秒以内に答えてください!はい三秒!」
なんていう無茶ぶりだ。
そしてちょっと陰口を言った生徒は号泣していた。
後日クラスは傷つきながらも健気に気丈に振舞っていると見事な誤解を受ける事になるのだった。
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