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第一章
閑話3悲しみの世界で③
しおりを挟む二人の女性の死は社交界とってさして問題なかった。
他人の不幸を嘲笑っていた連中が忘れる頃に問題は生じた。
王都内で震災が起きて、食料困難に陥った。
特に困ったのは王都に一番近い領地を持つ高位貴族だった。
ジュレイド侯爵家も例に漏れなかった。
婚約破棄事件により信用を失い、一人娘だった事もあり跡継ぎはいない。
傾きかけた侯爵家を助けてくれる商人もいない。
これまでご機嫌取りをしていた貴族もわが身が一番大事なので手のひらを返した。
頼れる相手はいない。
皮肉な事に宮廷貴族達はこれまで馬鹿にしていた辺境貴族を頼らなくてはならなくなったのだが、今まで馬鹿にして辺境地が困窮している時に馬鹿にしていたので今さら手助けしてくれなんて調子がいい話だ。
ジュレイド家はというと。
「何故だ。どうして誰も手を貸さないんだ」
「こうなったらクレイン家にお金を出させましょう。当然よ」
「そうだな…」
未だに二人はこうなった責任はキャサリンの所為だと思い込んでいた。
しかし…
「クレイン家が爵位、財産を返上しただと!」
「一体どうして…」
「二人そろって平民となりご息女の菩提を弔うと」
「馬鹿な…娘の為に」
「なんて無責任なの!」
二人は別にクレイン家が没落しようともどうでもいい。
ただ自分達を援助してもらえないのが許せなかったのだ。
しかも領地を返上した後に財産は、王都内の貧しい孤児院と教会に寄付した事だ。
「なんて無駄な事を」
「これまでの恩を仇で返すなんて」
苛立つ二人だったが…
既に立て直す事は叶わず没落寸前だった。
そんな折、王都を追放されることになったのだが。
「オレリア!」
「お父様、お母様」
錆びれた土地で見る影もない娘を見つけら両親の取った行動は。
「お前の所為で!どうしてくれる」
「貴女が駆け落ちなんてする所為で」
「どうして二人が…それにその恰好は」
ジュレイド家は没落した後に膨れ上がった借金を返す事が出来ず夜逃げして王都から離れた地にたどり着いたのだ。
「王都では私達は今や笑い者よ。親友を殺した娘」
「は?」
「お前が王都を出た十年後に再調査が行われた。計画的にキャサリンを追い詰め殺したとな」
「違うわ。私だって被害者…」
「既にお前は加害者だ。殿下と平民の娘の間に男女の関係はない‥平民の娘は卒業を出家した後の二年半後亡くなっている。喪主はクレイン家だ」
「何で…どうして」
「知るな!解っているのはお前が友人の婚約者を誘惑した後に、全ての責任をキャサリンに押し付け殺したという事実のみだ!」
「違う…私は悪くない」
耳を塞ぎ自分は悪くない。
キャサリンが死んだことは間接的に聞いていたが、自分に非はないと認めなかった。
「とにかく責任を取って私達を養え」
「そうよロイドは何処!」
共に責任を擦り付け合うばかりだった。
既に彼等は家族としての温もりも絆もなかったのだった。
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※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
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