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第一章
23迷惑
しおりを挟む既に風紀委員を呼びに出ようとする生徒がいる。
それどころか騎士科にも連絡している時点でまずいわ。
これ以上問題を起こされたくない。
「君は出るな」
「いいえ、そんな訳には」
「また何をされるか」
ロイドはああ見えて起伏が激しい。
頭に血が上れば感情を抑え込むことができない直情型でもある。
「私が行こう」
「殿下、ここは学園です。いかなる権力も無意味です」
使えたとしても学園内で殿下の立場が悪くなる一方だわ。
「優先順位があります」
「え?」
「物事にはどれも優先順位を間違えてはなりません」
前世の私は優先順位を間違えた。
そしてあの二人も優先順位を間違えなければあんな酷い結末にならなかった。
「優先順位は彼を宥めながらこれ以上被害を大きくしない事です」
「ならば私が…」
「この問題は私が蒔いた種です」
生徒会を、風紀委員を巻き込んでしまったのは私の失態だわ。
「待ってください。私はここにいます」
私はロイドの前に出た。
そこにはオレリアもいて驚いた。
「キャシー!」
久しく愛称で呼ばれた気がした。
「どうか、クレインとお呼びくださいませ。フォーカスさん」
「は?」
理由は言わなくても解るだろう。
私と貴方はもう婚約者でもないのだから。
愛称で呼ぶなんて論外だ。
「まだ会議が終わっておりません。話は手短にお願いします」
「何だその態度は!」
「大きな声を出さないでください」
出来るだけ声を静かに、冷静に務めた。
感情的になるのは愚かな事だと貴族子息として、騎士として教わったはずだ。
「キャシー、どういうことなの」
「どうとは?」
「何故貴女が生徒会に入っているの」
「この学園の規則です。生徒会幹部は前任の推薦により就任すると」
「知っているわ…でも、私が選ばれるはずだったわ」
確かに、オレリアが選ばれるはずだった。
「なのにどうして…」
「君は副会長になる器じゃない。なのにどんな手を使ったんだ。挙句の果てに学園では俺達は笑い者だ!」
「器…ですか」
何を持って私に器がないというのか。
「何故です?」
「え?」
「誰が決めるんですか。生徒会に入る条件は器じゃないと思います」
前任に選ばれるのが絶対条件じゃない。
確かに必要ではあるが、選挙で立候補をする事で選ばれる。
「生徒会は何の為にありますか?」
「そんなの学園の格式を守る為よ」
「違います。生徒達の為です。学園は生徒達の為にある。そして新しく入る新入生の為…その為に生徒会は特権を与えられています」
副会長の言葉がまだ響いているの。
未だに学園内の格差社会は根強いけど、少しずつ良くなっている。
「私は確かに貴女のように多くを持っていない。相応しくないでしょうね」
「当然だ。君に生徒会に入る資格なんて…勉強が少しできるだけで」
「だからこそ、認められるように努力しようと思っています」
「何を…」
私が辞退する事はない。
一度引き受けた仕事はちゃんと引き受ける。
「貴女は常に貴族ならば責任ある行動をおっしゃってましたね?」
「えっ‥ええ」
「でしたら一度決めた事を覆すなんて無責任です」
遠回しに私は事態をしない。
そして責任ある行動をしろと言ったのだ。
「フォーカス様、婚約の件に関しては心配なさらないでください。この度は私の失態です」
「キャシー!」
悪いのは私だと宣言して置けばこの場で邪推する人は少なくなるだろう。
「本当に好き方と一緒になった方が賢明ですわ」
そっと他の方に聞こえないように囁く。
「オレリアを愛していながら不誠実ですわよ」
「なっ…」
意地悪を言ってしまったが、この程度は許されると思った。
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