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第一章

17奇妙なお茶会

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何だろうか、この光景な。
前世では敵でもあったはずのヒロインに、王族の中でも身分が高い公爵家のご子息と何故お茶会をしているのか。


「あっ…綺麗に出来た」

「ちゃんとできているじゃないか」


ナイフとフォークの使い方が解らないと言っていたけど、呑み込みが恐ろしいほど早い。
私達貴族は幼少期に数年かけて叩きこまれるけど、キャンベルさんは今日初めて使ったナイフとフォーク。

一応滑り止めをつけさせたけど。


「次は紅茶の飲み方を。音は立てないようになさい」

「はっ…はい」

「くくっ…」


そしてまた笑っていらっしゃる。
何がそんなにおかしいのか理解に苦しみのだけど。


「このスコーン美味しいな」

「はぁ…」


クレッセンド公爵家なら、こんな質素なお菓子よりも豪華なお菓子を食べ慣れているだろうに。


「ご冗談を」

「冗談ではない。すごく美味しい。特にこのビスケットは食べ応えがある」


クッキーよりも低コストで領地で作っているシロップをねじ込んでいる。

他にも野菜を使ったスコーンにプリン等も。


「私は王宮のお菓子はどうも苦手なんだ。甘さが強すぎる」

お年寄りみたいだな。
ここに並んでいるお菓子よりもずっと高価なのに。

「お茶も美味しい」

「はい、美味しいです」

「そう言いながら零れる程ミルクを入れるんじゃありません!」

既にミルクティーではなくなっている。
砂糖も量を加減しないとお茶の味が台無しになっている。


「学園の授業のお茶会ですれば原点ですわ」


「え‥そんな面倒な授業が」


面倒って言った?
更に頭が痛くなって来た。

怪我の痛みはないのに、別の意味で頭が痛かった。


「マナーは必須よ」

「なんだか貴族ってめんどくさいですね?食事の時も思いましたが」

「学園でそれを言わないように」


前世で貴族令嬢に苛められたのも思った事を口にしてしまったからなのか?

素直で悪い子じゃない。
でもこの学園ではそんな生徒は潰される。

社交界と同じで、弱い者は食われるのだから。


「思った事を口にする前に考えなさい」

「えっ…」

「貴女は攻撃的な事は口にしない。でも言葉は悪気が無くても聞かされた本人が不快に思ったら既に凶器よ」

「うっ…がんばります」


頑張るだけじゃ意味がないのだけどね?
貴族社会では常に結果が重視されるから努力など見ようともしない。

でも、ここまでは言うべきではないわね。


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