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第一章

10前々前世

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階段から足を滑らせ落ちる瞬間視界がぐにゃりと歪んだ。


その時頭に変な映像が入って来た。


――これは何?


目を閉じると変な映像。


もう一人の誰か。


違うこれは私?


『略奪愛ルート突入ね』

何これ。


『通常に逆バージョンで、略奪愛しちゃうのでしょ?』

『そうそう、お助けキャラの婚約者と愛の逃避行をするルート』


何これ…


『最近の乙女ゲームでは友人キャラの婚約者を奪ってエンディングを迎えるの』

『なんかこれだけ、エグイよね?最終的に悪役令嬢は幸せになってその責任を親友に負わせるんでしょ?マジで当馬で、最終的に死んじゃうんでしょ』

『まぁ、所詮ご都合主義って言うか…悪役令嬢のオレリアも最後は自分の幸せしか考えてないんじゃない?』

『隠しルート別になかったし?』



悪役令嬢?


エンディング?


隠しルート。


聞きなれない言葉が頭に入って行く。


違うこれは…


私は知っている。


そうだ、この記憶は前世じゃない。

前々前世の記憶。

私は――。



この光景を目の当たりにしてようやくピースが揃った。


でも思いだしてまた死ぬの?


また悲しませてしまうの?


あの日の記憶が残っている。
日に日にやせ細って行く私を泣きながらずっと看病してくださったお母様、悔しそうに泣くのを耐えるお父様。


お嫁にも行かずに、私の傍で支え続けてくれたエリー。



『キャサリン…お願い目を開けて』

『キャサリン!』

『お嬢様!』


私は大切だったのはロイドじゃない。

守りたかったのは一つなのに。


そして。


自分の罪を悔いて、償おうとした彼女の表情を思い出す。


彼女は本当に悪女なの?
何も真実が解らないまま死ぬなんて。


悲しいまま死ぬなんて嫌だ!



「キュキュー!」


「ピィー!」


二匹の鳴き声が聞こえた。


「キャサリン!」



私の名前を呼ぶ声が聞こえたけど、私はそこまでしか覚えていなかった。





次に目覚めた時は。




「――さ‥ま」


エリーの声が聞こえる。



「お嬢様!」


耳元に聞こえた私が目を覚ますとそこは保健室だった。


「起きない方がいい」

「殿下?」

「痛みはないか?寸前の所で彼女が光魔法で衝撃を和らげたが…」



頭から落ちた割には軽傷だった。
普通なら頭の打ちどころが悪くて死んでしまっていたのかもしれないのに傷もない。


「えっぐ、えっぐ…すいまぜぇん。上手く魔力を使えなくて」


いや、お礼こそ言っても責める事はないだろうし。

「キャサリン嬢、まだ寝ていた方がいい」

「君は絶対安静だ」


何故だろうか。
眠気が襲って来た私はうとうとしてそのまま眠ってしまった。


前々前世の記憶を取り戻した所為なのかすごく疲れてしまった。



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