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第一章
6席替えと失敗
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私はセルシア・キャンベルと言う少女を知らない。
王太子殿下に近づき、婚約者のいる男性を誘惑したと噂で聞く程度。
以前からオレリアは学園の風紀を乱すと怒っていたけど。
私からしたら婚約者がいながら誘惑される男も馬鹿だと思うし、疑問に思ったのが何故平民の少女の周りに高位貴族が集ったのか。
学園内は平等にと言われながらも未だに不平等だ。
「あっ…あの」
「突然申し訳ありません。どうか私の事はお気になさらないでください」
少し冷たい言い方だけど、ただのクラスメイト。
それに特別科ではクラスメイトは互いにライバルでもあるので仲良しのお友達とは行かない。
だけど挨拶ぐらいはするべきよね?
「キャサリン・クレインと申します」
「あっ…セルシア・キャンベルです」
「存じております。今年の生徒代表とお聞きしてます」
「え!」
ここで驚く事かしら?
入学式でも代表生徒は最前列に座っていたのに。
「これから共に頑張りましょう」
「はっ…はい」
緊張しているのかしら?
教科書を握りながら震えている。
よく見ると教科書が破れている。
おくらお古と言えどおかしいと思った。
それにノートも。
まさか嫌がらせ?
入学して早々に陰湿な扱いを受けているの?
「あっ…あの、何か?」
まずいわ。
じっくり見過ぎて不審がられてしまう。
「とても素敵なペンケースだと思って」
とにかく話題をそらうと咄嗟に彼女が持っている手作り満載のペンケースに少し古い万年筆を見る。
「素敵なペンケースに使い古された万年筆ですわね」
「これは父が…」
「余程見識のあるお父様なのですね」
嘘ではない。
本心で言ったのだ。
だってそのペンケースと万年筆には天使の羽の絵が描かれていた。
とても使い古された万年筆は長年使われたように見えるのに、手入れが行き届いている。
「元は男性の万年筆を女性用にリメイクされているわ。それに天使の羽を絵を掘っている事からお父様は深い愛情を持って送り出されたのね」
私も生まれた時にお祝いにお父様が長年使われた大切な万年筆をリメイクして私に贈ってくださったわ。
「…そうなんです」
「え…」
何故か涙目で見られた。
「グスン、私の父はとっても優しくて自慢の父なんですぅ!」
いきなり泣き出した。
周りの視線が集中する中私は選択を間違えたのか?
「教室で大きな声を出さないでください。そもそもレディーが簡単に涙を流す物ではありませんわ」
「はいぃ!」
随分と印象が異なっているわね。
とりあえずハンカチを差し出すと同時にチャイムが鳴り、先生が来たので安堵した。
王太子殿下に近づき、婚約者のいる男性を誘惑したと噂で聞く程度。
以前からオレリアは学園の風紀を乱すと怒っていたけど。
私からしたら婚約者がいながら誘惑される男も馬鹿だと思うし、疑問に思ったのが何故平民の少女の周りに高位貴族が集ったのか。
学園内は平等にと言われながらも未だに不平等だ。
「あっ…あの」
「突然申し訳ありません。どうか私の事はお気になさらないでください」
少し冷たい言い方だけど、ただのクラスメイト。
それに特別科ではクラスメイトは互いにライバルでもあるので仲良しのお友達とは行かない。
だけど挨拶ぐらいはするべきよね?
「キャサリン・クレインと申します」
「あっ…セルシア・キャンベルです」
「存じております。今年の生徒代表とお聞きしてます」
「え!」
ここで驚く事かしら?
入学式でも代表生徒は最前列に座っていたのに。
「これから共に頑張りましょう」
「はっ…はい」
緊張しているのかしら?
教科書を握りながら震えている。
よく見ると教科書が破れている。
おくらお古と言えどおかしいと思った。
それにノートも。
まさか嫌がらせ?
入学して早々に陰湿な扱いを受けているの?
「あっ…あの、何か?」
まずいわ。
じっくり見過ぎて不審がられてしまう。
「とても素敵なペンケースだと思って」
とにかく話題をそらうと咄嗟に彼女が持っている手作り満載のペンケースに少し古い万年筆を見る。
「素敵なペンケースに使い古された万年筆ですわね」
「これは父が…」
「余程見識のあるお父様なのですね」
嘘ではない。
本心で言ったのだ。
だってそのペンケースと万年筆には天使の羽の絵が描かれていた。
とても使い古された万年筆は長年使われたように見えるのに、手入れが行き届いている。
「元は男性の万年筆を女性用にリメイクされているわ。それに天使の羽を絵を掘っている事からお父様は深い愛情を持って送り出されたのね」
私も生まれた時にお祝いにお父様が長年使われた大切な万年筆をリメイクして私に贈ってくださったわ。
「…そうなんです」
「え…」
何故か涙目で見られた。
「グスン、私の父はとっても優しくて自慢の父なんですぅ!」
いきなり泣き出した。
周りの視線が集中する中私は選択を間違えたのか?
「教室で大きな声を出さないでください。そもそもレディーが簡単に涙を流す物ではありませんわ」
「はいぃ!」
随分と印象が異なっているわね。
とりあえずハンカチを差し出すと同時にチャイムが鳴り、先生が来たので安堵した。
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