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序章
1最後の時
しおりを挟む広い―空を見上げたながらもう一度手を伸ばしたかった。
この狭い空から出る事は叶わない。
どうしてこんな未来を歩んでしまったのか。
後悔の念に囚われる。
「残念ですがご息女は」
「まだ娘は17歳だぞ!明日で18歳を迎えるというのに」
「このような仕打ち、あんまりではありませんか!」
嘆き悲しむ両親。
傍で私の手を握りしめる優しい侍女。
私はもうすぐ神様の元に行―く。
何も果たせなかった事が無念でならない。
「どうして…何で私の娘がこのような」
「私は恨むぞ。神を…いや、そもそもの原因はあの女とあの男だ」
ああ、お父様。
誰よりも王家に忠誠を誓っていたのに。
「お父様…ふけ‥で‥すよ」
「こんな時にまでお前は!私が馬鹿だったのだ…許してくれ」
「誰よりもお優しい貴女にこんな思い荷を。どうして彼女は貴女を裏切ったの!殿下はどうして理を捨てあんな真似を!」
泣きじゃくる母に私は何も言えなかった。
もう言葉を発する事も出来ない私はただ窓から見える空を見つめるだけだ。
風がそよぎ羽が私の手のひらに落ちる。
本当は外に出たかった。
王都の狭い世界ではなく広い世界に出て自由に生きたかった。
だけど選んだのは私。
未来の王妃となる友人を支える道を選んだ。
なのに何処で道を間違えたの?
聡明な王太子殿下は平民の少女と恋に落ちて、傷ついた親友は王家を糾弾した。
その結果社交界は乱れ、これまで水面下ではギリギリの貞節を守っていたが。
あの悲劇。
断罪劇の所為で社交界の秩序は壊れ国が荒れてしまった。
侯爵令嬢を捨てて平民の娘と恋に落ちた王太子殿下は廃嫡となり、平民の少女は強い魔力を持っているがために飼い殺しにされた後に国外追放。
国を捨てた親友は私の婚約者と駆け落ちし。
私は親友に婚約者を寝取られ捨てられた哀れな令嬢のレッテルを貼られた後、友人を諫められなかったと巻き込まれた令嬢の両親から糾弾された。
親友の責任を負わされ激務の末に私は――。
過労で倒れてしまった。
親友は元婚約者と結婚したと遠い風の噂で聞いた。
学園の友人は見舞いにも来てくれない。
「旦那様、大変です!」
「何だ騒々しい」
「見舞いにあの方が…」
意識が朦朧とする中声が聞こえた。
「ふざけるな!娘がこうなった元凶の貴様が」
「お願いします。どうか…どうか一目だけでも!」
この声は――。
「キャサリン様」
「セルシア様」
国外追放になったはずの彼女がどうして?
「今すぐつまみ出せ!」
「誰の所為で娘がこんな目に合わせたと思っている!」
「今すぐ出て行きなさい」
体は動かない。
でもこの時私は声を放った。
「傍に…」
「キャサリン」
「最後です」
私は手を伸ばしその手を彼女は取ってくれた。
この時私は彼女自身も苦悩していたのではないか。
私は何処かで道を踏み外したのではないか。
そんなことを思うようになった。
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