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番外編
幼き女王の爪痕④
しおりを挟む脅迫に近しい手紙が何通か届くもメアリは握りつぶした。
そしてキーナンは強引な手段に出た。
応じなければ戦争になるとも。
しかしそう簡単に行かなかった。
既に帝国軍の兵士達は弱体化しており、若い物は疫病で苦しみ真面に動けなかった。
動ける数は限られている。
頼りにしていた同盟国からは長年虐げられていた事で反旗を翻し、孤立したのだ。
「現皇帝は疫病に感染したそうですね」
「しかも感染したのが側妃からだ」
「馬鹿にも程があります」
側妃が疫病に感染して、そのまま皇帝と接触感染をしたらしい。
貴族達も愛人が感染している事にも気づかずに感染予防はまったくしていなかった。
自分は絶対大丈夫だと思って油断している者に限ってかかるのだから。
「部下に感染患者を救う薬と治療法を伝え、同盟国に手を切らせている」
「私も働きかけました。これでラセンドルは自滅するでしょう」
「戴冠式を理由に入国しようとするも無理だろうな」
「ええ」
例え同盟国から手を切られても、キーナンが戴冠式に参加した名目で国に入る事は出来るが、正当な理由で断ることができる。
「皇帝陛下が病床に臥している事を他国にも回してある…そうなれば国から出る事は出来ない」
「万一したとしても病原菌を撒き散らす者を入国できません。無礼と言われても他国は我らに味方をするでしょう」
「ああ、既に手筈は整っている」
それに最短ルートで来るには海を渡らないとダメだけど。
海を渡るにしても障害物が多いし、海の生き物が邪魔をするように仕掛けをしている。
「戴冠式には間に合わせません」
「ああ」
「そしてミカエル様が王となれば皇太子に過ぎない彼が何かできるはずもありません」
既に傾きかけてるラセンドル帝国の皇太子と他国からも信頼される国とではどっちが違うか。
「正教公国に戦争を仕掛ければどうなるか解るでしょう」
「ああ」
正教公国とは時として敵に回せば恐ろしい事になる。
人々の信仰心が強ければ強い程に。
「国王陛下が他国に渡り、ラセンドル帝国の現状を伝えてくださっています」
「あの方があの時点で生前退位を望んだのはこのためだったからな」
まだ動ける段階で退位してミカエルの邪魔となる者を全力で排除する。
そして影から守る為に今も動いている。
「私のできる事はこの程度ですが…皆ミカエル様を望まれています」
「十分だと思うがな」
魔族を従え国を守る為に力を注ぐメアリは既に王妃としての役目を果たしていたのだった。
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