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最終章白の治癒師
15裏切者の果て
しおりを挟む威嚇するようにナイフを国王に向ける。
「大人しくしろ!」
「今日が何の日か解っての狼藉か!この無礼者めが!」
ギーゼラが剣を抜こうとするも、傍にいるユリウスに止められる。
「刺激するな、陛下の御身が危ない」
「ならば!」
リーシアが直ぐにグリモワールを取り出すとするも。
「きゃああ!」
背後から雷撃がぶつけられる。
「なっ…」
「仲間がいたか。しかもこの雷は…そうかラセンドル帝国と手を組んだか」
「馬鹿な事を。敵側に祖国を売るなんて…いいえ、腐った考えしか持たない男には愛国心なんてありませんわね?ラセンドルも馬鹿な事を」
火傷を負ったリーシアは聞き手を押さえながらも、気丈に振舞いアークを非難した。
「黙れ!俺は選ばれたんだ…お前達と違ってな」
「選ばれた?何を言っているの?」
「メアリ!近づいてはダメだ」
ミカエルが止めに入るもメアリは止まらなかった。
「身分を捨て犯罪者に成り下がり、今度は陛下を敵国に売るまで堕ちるとは…何処までも最低最悪な人」
「違う。俺は選ばれたんだ。メアリ…君だってこんな小さな国の王子の妃で終わるなんて本位じゃないだろ?教皇という身分を得たのに…制約や決まりに縛られて生きて行くんだ」
「祖国を侮辱する気ですか!」
「何が祖国だ、法律だ…こんな小さな国では他国と渡り合えない。民草の為に魔力を使い、優れた能力を何でいてもいなくても…いや国のゴミにしかならないような奴等の為に使うんだ。いっそう民などいなくなればいいんだ。そうすれば!」
「お前は民を何だと思っているんだ!」
「父上!」
拘束された国王は殺されそうになりながらも告げた。
「王族、貴族は守る側の人間だ。この国に犠牲になっていい民などいようか…我が国は他国を侵略せず、他国の争いに介入しないことを理念として来た」
「そんなものは偽善だ!酔狂だ」
「例え酔狂と言われようとも、初代国王はずっと初代教皇猊下に誓って来た。汚い金で民は幸福になれようか…例え我が首を差し出す事になっても許さぬ!民を犠牲にする行為は断じて許さぬぞ」
「兄上…」
病床に臥していても王としての矜持は健在で、殺されようとも脅しに屈しない姿は紛れもなく王の器だった。
「アーク・カートンよ。お前はもはや女神から聖騎士を剥奪された身だ。何処へ行っても居場所はない…国を裏切った元騎士に居場所はな?」
「黙れ黙れ黙れ!」
「私を人質にしてもラセンドルの従国になる事はない。大方ラセンドルの皇子にそそのかされたのであろう?」
ラセンドル帝国は身内で皇位継承権をめぐり骨肉の争いをしている。
その醜い争いに巻き込まれただけにすぎないと告げたのだった。
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