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最終章白の治癒師
14正体
しおりを挟む最初から違和感があった。
近衛騎士とは王族、特に国王と王妃を傍で守る特権を与えられた立場だった。
その為、選ばれるときには厳選される。
身分ではなく、いかに両陛下に忠誠を誓っているか。
そしてどれ程両陛下の事を理解しているか。
試験を受ける時にも、私生活は勿論。
好きな食べ物や食べてはならない物を把握するのは当然だった。
公の場では飲み物も心配りが必要で。
毒は入っているか確認するものも近衛騎士が行うのだ。
なのに、おかしいと思ったのは。
傍にいる護衛騎士の振る舞いはあまりにも不自然だった。
通常なら国王が飲むドリンクは厳選し、尚且つ透明な色の飲み物を選ぶ。
しかも病み上がりの病人に葡萄ジュースを進めるもおかしかった。
通常なら透明の色のジュースを選び解毒効果のある柑橘系のジュースを進めた後に、ノンアルコールの飲み物を進めるのだ。
なのに最初に葡萄ジュースを進める時点でおかしかった。
(この人は!)
ジュースだけではない、メアリは近衛騎士と、騎士団の歩き方を熟知していた。
(歩き方がおかしい…それに靴が)
近衛騎士は歩き方も徹底されている。
通常の騎士とは異なりできるだけ静かに歩く訓練を受けているにもかかわらず、目の前の護衛騎士は歩く音が聞こえた。
そして次に靴だった。
近衛騎士の靴は普通の騎士達の靴とは異なり靴紐が使い古されている。
古くてボロボロではなく、しっかり使い込まれているのだ。
なのに、使いこまれた形跡はない。
(なんて事…)
この二つだけで十分に判断する材料となる。
「うわぁぁ!」
杖をかかげ眩しい光と共に護衛騎士の姿が変わった。
「なっ!」
「まさか、大胆にも王宮に忍びこぶとは」
「何処までも見下げ果てた男だな。アーク・カートン」
護衛騎士の正体はアークだった。
「くっ…何故!」
「私の杖は正義の女神の加護があります。幻術を解く事など簡単です。姿を変えてもボロは出ていましたが」
「元騎士にしては随分とお粗末だな」
この程度で騙せるはずがないのに、アークはメアリを侮り過ぎていた。
ずっと戦場で騎士の傍にいたのだから解らないはずがない。
「くそぉぉぉ!」
「ぐぁ!」
アークは懐から剣を出し、国王を人質に取った。
「父上!」
「陛下!」
一瞬の出来事だった。
傍にいた国王を床に叩きつけ剣を向ける。
「兄上!貴様…」
傍にいた王弟は即座に剣を取り出そうとするも、アークは国王を盾にして誰も身動きが取れなかった。
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