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最終章白の治癒師
10胸騒ぎと警告
しおりを挟む不安を残したまま、婚約式が行われることになった。
アークの行方は第三騎士団が追っているのでいずれ捕まるだろうが言いようのない不安が襲う。
(胸騒ぎがする…)
大事な婚約式は国民の前でもお披露目をする。
その前に王宮内での広間にて発表をする事になっている。
(もし婚約式に…考えすぎかしら?)
王宮内では厳重な軽微が行われている。
隣国の同盟国や友好国の代表も今日の日を心待ちにしていたのだ。
ミカエルの立場ならば幼少期の頃に婚約が結ばれるべきだったが、度重なる王族の不幸により婚約を結ぶことをミカエルが拒んだのだ。
(陛下は未だ無理ができない状態で、王弟殿下が代理をされる…)
ただし、病が完治した事もあり国王は公に顔を出す事になっている。
息子の婚約式に参加しないわけにはいかず、長時間ではないが参加するのだが。
(このタイミングで問題が起きたら最悪だわ)
病み上がりの国王が狙われれば、最悪な状況となる。
「メアリ、入るよ」
「お父様…」
王宮内で、メアリの為に用意された部屋に入って来たのはティエルドだった。
婚約式前に他の者は遠慮していた。
「心配そうな顔をするんじゃない」
「でも、お父様。胸騒ぎがするんです」
「警備は強化しているが、君の勘は鋭くなってきているようだね」
まるで何か良くないことが起こるような言い方だった。
「先ほど、近衛騎士の一人が行方不明だと報告を受けた」
「えっ…」
「まだ彼は近衛騎士に配属されて日が浅いが、真面目な男だ。なんらかの事件に巻き込まれた可能性がある」
「それは!」
どう考えてもおかしいではないか。
婚約式当日に事件に巻き込まれているなんて。
「彼の事もあるからね」
「お父様…」
「万一の時は解るね?」
「はい」
婚約式当日に事件が起きる可能性がある。
そうなった時は傍にいる近衛騎士よりもメアリの方が動ける。
「君が前に出る様な事になって欲しくないが…」
「いいえ、解っております」
「私も注意はする。だが、万一に備えた方がいい」
その万一になって欲しくないが、不安定な状況なので備えておくに越したことはなく。
メアリはグリモワールと杖を隠し持つ事にした。
「メアリ様、お綺麗ですわ」
「ええ、本当に」
婚約式が始まる前に迎えに来たのはリーシアとギーゼラだった。
「今日は最高の装いをしなくてはならなかったのですが」
「ですが、お美しいです」
本来ならばもっと着飾るのだが、絹の生地の白いワンピースに首にはシンプルな銀のネックレスだった。
王子妃の婚約者ならばもっと豪華であるが、聖職者という立場上は過度に着飾るのは禁じられているし、ドレスは白以外は許されなかった。
(私は助かったけどね)
内心ではシンプルな装いで助かったと思うメアリはリーシアには言えないでいた。
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