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最終章白の治癒師
9指名手配の男
しおりを挟む来週には婚約式が行われる。
その前にアークを捕らえようと考えていた王族。
既に身分は剥奪されてるが、誰かが匿っているならば厄介だった。
「あの男が国境付近にいる目撃証言を得た。商人から馬車を奪った被害届も出ている」
「何所まで迷惑をかければ気が済むんですの」
「アーク…」
まだ罪を重ね続けているのかと思うと頭が痛くなるメアリだったが、何故商人も騙されたのかと思う。
「指名手配は王都内は出回っている」
「はい、伺っています」
「だが、顔を返れば解らない」
「顔を返る…」
姿を変える魔法は存在する。
他には幻覚を使う魔法もあるがどれも高位魔法でアークには使えるはずがない。
「道中で姿を変える薬を買えるとは思わないが…そこで問題だ」
「はい」
「アークは姿を変えて身を隠した後に馬車を奪い逃走した。その商人はそれなりの身分の自分つだったわけだが」
「まさか…」
メアリは嫌な予感がした。
馬車だけでなく奪ったのはまだある可能性が高い。
「あの男は本当に屑だぜ。商人の娘に手を出した」
「何ですって!」
「被害にあった商人に話を聞けば、詐欺にあったらしい…手を出された娘と結婚の約束をして父親にすりより、馬車と金を奪った後にその女は捨てられたそうだ」
(酷い…酷すぎる!)
堕ちる所まで堕ちてしまったアークに同情する気はない。
ただ許せないのは。
(どうしてここまで人の心を!)
自分の欲の為に他人の思いを利用してあっさりと捨てた事が許せない。
己の欲望の為にどれだけの人を傷つけ踏みつければ気が済むのかと怒りを感じる。
「メアリ嬢ちゃん」
「はい…」
「悪い情報を仕入れたんだ。我が国と敵対するラセンドル帝国が動きを見せている」
「ラセンドルが…」
南帝国ラセンドル。
長らく敵対関係にある国で現在は停戦状態にあるが、他国に攻め入り戦争を度々行っており、危険視している。
「帝国では今、帝位継承権の奪い合いをしている…しかも厄介な事にあの馬鹿が関わっている可能性がある」
「ちょっとお待ちくださいな。なぜラセンドル帝国とあの男が…」
「関わっているとは言ったが手を結んでいるとは確定していない。だが、用心しろ」
「はい」
ラセンドル帝国は奴隷、人身売買。
敗戦国の王族をも奴隷にして非道な真似をする危険な国だった。
地位を守る為に平気で民を殺す冷酷な皇族や貴族も少なく無い。
そんな国と手を結ぶなんて信じられなかったが、接触した証言があるならば注意する必要がある。
「婚約式に乗ろこむなんて馬鹿な事はしないだろうがな」
「いくら何でもそんな馬鹿な事をするとは思えませんわね?子供でもしませんわ」
リーシアがいくら頭がおかしくなったとしてもありえないと思ったのだが、そのありえない事が起きてしまうとはこの時、その場にいる者は気づくことはなかった。
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