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第三章真実の聖女

38脱獄

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「失礼します」


慌ただしい足音に焦った声で部屋に入って来たのはミカエルだった。


「どうなさいましたの?ミカエル様」

「ミカエル様?」

「何だ?またあの不良王女が何かやらかしたか」


普段冷静沈着のミカエルが慌ただしく部屋に入る事は珍しかった。


「ミカエル様、何かあったんですか」

「メアリ…落ち着いて聞いてくれ」


「何だ?脱獄でもしたのか?」


ソファーでくつろぎクッキーを齧りながら何でもないように言い放つユリウスにミカエルは驚く。


「どうして解ったんだ?」

「さっき、杖が光ったんだ。警告だったんだろう…不吉な予感のサインだ」


「何を呑気に!」

サリアンが怒るもユリウスは特に気にしなかった。


「まさか脱獄する気力があったとはな、しかし馬鹿だろ」

「いや、言っている意味が」

「脱獄しても罪が重くなるだけだ。残りの魔力の全てを注ぎ込んだのか…それとも誰かが出したのか」


ユリウスはお茶を飲みながらさして興味もなさそうだった。


「何を呑気な事を言っているのです」


今さらアークが何かできる事はない。
既に実家にも連絡入り今回の一件とこれまでメアリを搾取した事に関して調査も行われている。


対するモリガン家も同様だったが、殺人未遂ということで国外追放とまではならなかった。
ユーフィリアの両親は用意周到なのか証拠になるものを処分していたので、自分達は関わりないと容疑を否認している。

しかもユーフィリアの罪を悪に擦り付けようとする一方で、アークの両親も同様だった。


証拠の映像はあるものの、現状では法で裁いたとしてもまだ材料が少ない。
伯爵以上の地位を持つ貴族はそれ程厄介だったのだ。


しかし現段階ではの話だ。


牢獄から逃亡したとなれば罪は更に重くなる。


「簡単に逃亡するなんて妙だな…」

「誰かが手助けをしたと言う事になりますわね…本当に迷惑な」


そして事態は更に悪化の一途を辿った。
アークを逃げたと同時期に、ユーフィリアも姿を消したと知らせが入った。


ユーフィリアと一緒に逃亡した可能性が高く、捜索隊が調べる中二人が一緒に逃亡している情報を得た。

逃げ出す途中に旅人の馬車を無理矢理奪い怪我をさせたという報告も上がり二人が国から逃げようとしていると判断し罪を追加したのだが…


その三日後、ユーフィリアは国境近くで見つけ出されたのだった。

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