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第三章真実の聖女
30誓約書
しおりを挟む手短にかつ解りやすくアークに契約の話をした。
「つまり俺は、メアリの才能を開花させるだけの為に」
「勘違いをしないでもらおうか、強引に頼み込んだのは君の父親だ。私もメアリとは親しくしているのを見て、入り婿には不相応だが、メアリを最終的に支えてくれるなら妥協した」
「なっ…入り婿!」
「何を驚く?」
アークは婿としては言っても最終的にはバルセルク家の財産は時分の物となる思い込んでいた。
「君は婿養子として迎え、バルセルク家お当主はメアリの第一子になるのが当然だ。君との婚約で国王陛下からもそれが飲めないならば許さないと言われてね」
「そんなの…あんまりだ!」
時分はそんな役回りをさせられていたのか。
契約書にはこう書かれていた。
以下の事を最低条件とする――。
婚約期間中にメアリ・バルセルクの才を開花させる事。
結婚しても遺産を引き継ぐのは実子のみ。
万一子供ができな場合は領地は国に返還する事とする。
そして、メアリ・バルセルクが一六歳になるまでに真の才を開花できなければ婚約を白紙とする。
また、その場合は婚約中に発生した費用を全額返金する事を命じる。
「こんな…あんまりだ!」
床に叩きつけられた誓約書を見て絶望する。
「ただ、これは表向きな誓約書だ。婚約中に君が行った所業はしっかり耳に入っている…メアリが送った品はきっちり返してもらう」
「待ってください…それは」
「売ったのならば取り返すか、その金額を返金してもらおう」
「そんな!」
メアリがアークに送った品はメアリが手作りした物や戦場で手に入れた魔石などもある。
金額に当てはめれば相当な額になる。
「それから婚約破棄になった以上は援助金もすべて返上してもらう。私にではなく国にな」
「今さらそんな…」
「できないでは通らない。君は国税を何だと思っているんだ…我らの領地は私物じゃない。国の物だ」
バルセルク領地の収入の半分は国民の為に使っていた。
アークがメアリの名義で勝手に掴ったお金は本来ならば国に寄付するお金だった。
メアリは地道に収入を増やして騎士団や孤児院に寄付するつもりだったが、アークが投資をして増やしてからの方が良いと言って勝手に使い込んでいた。
投資は失敗しメアリに黙って借金したが金額は膨れ上がってしまっている事をティエルドは知っていた。
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