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第三章真実の聖女
28親子
しおりを挟む大勢の前に突き飛ばされたのはモリガン伯爵だった。
「お父様!」
「ユーフィリア!お前はなんて事をしてくれたんだ!」
「何で…」
睨みつける表情は憎悪に満ちていた。
父親が娘に向ける表情ではなかく、これまで優しかった父の面影は一切ない。
「今まで、無駄金を使いお前を育てて来たと言うのに…この役立たずが」
「そんな!私は…」
「もう我が伯爵家は終わりだ。お前のしくじりで地獄に落ちるだろう…何故もっと上手くやり過ごせなかったのだ」
(何で私が…私は悪くないわ!)
全てが完璧で順調だったはずなのに。
メアリを利用してそして最後は価値組になると思っていたのに。
「親子仲良く罪を背負われてはいかがですかな」
「バルセルク辺境伯爵!どうか…」
「残念です。私は娘の友人の父君である貴方に善意で援助をしてきましたが。恩を仇で返されるとは…」
「どうか!どうかお許しを!ユーフィリアは追放いたします!」
「酷いわお父様!何でよ」
「黙らないか!お前のしでかした事だろう!責任を取るのは当たり前だ。お前ひとりの命で片付くなら安い」
互いに責任の擦り付け合いをしている。
自分だけは助かりたいという身勝手な考えが丸見えだった。
「うわぁー…ないわ」
「なんて醜いのかしら」
「あれで良く聖女なんて名乗れたわね」
「本当に」
第三者はこの見るに堪えない争いを見て二人の本性を見た気がした。
「お二人共、そのような真似はお止めください」
「バルセルク辺境伯爵!」
「ユーフィリア嬢は貴方にとってはこの世でたった一人の娘でしょう」
「では…」
モリガン伯爵は顔を上げ内心では笑った。
(やはり馬鹿だったか…これで助かる!)
領地内でも娘馬鹿なのは有名だった。
優秀な男であるが娘を愛するあまり、利己的な考えができにと思っていたのだ。
「せめてもの情けです。二人一緒に罪を背負ってください」
「「は?」」
てっきり見逃してくれると思ったが、ティエルドは許す気など毛頭なかった。
「何で…」
「娘の不始末は親が責任を持つ者です。これから先は二人支え合って生きてください」
遠回しに二人そろって後ろ指をさされながら悲惨な日々を過ごし、生き恥を晒せと言っているものだった。
「そんな…」
「嫌よ。そんなの嫌よ!」
二人が待っているのは地獄以外はない。
しかも互いに足を引っ張り合うだけだったのだから。
「この二人を牢に。後に王都から追放とします」
死刑宣告にも近い言葉を言われ二人は連行されて行った。
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