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第三章真実の聖女
18結んだ縁
しおりを挟む悲しい気持ちはあれど二人を恨む気持ちはなかった。
二人の変化に気づけなかった事が情けなく、追い詰めている事に気づかあかった。
「私は自分が情けないです」
「メアリ様!」
「何を!」
自分を責めるメアリを二人は止める。
「きっとユリウス様は早い段階で気づいていたのに、そしてあの時も」
話し合いは無意味だと言っていたのは二人がメアリをどう思っているか、そして何をしても無駄だと思ったからなのだろう。
「もし、私も学園に来て一人だったら同じになったのかもしれません」
学園に来てすぐは一人ぼっちだった。
けれどメアリには手を差し伸べてくれる人達がいた。
(ミカエル様…)
苦しくて泣いているメアリに手を差し出し労り言葉をかけてくれたミカエル。
リーシアたギーゼラが傍にてくれて、口は悪いがユリウスが助けてくれて、今がある。
「メアリ様、私は思うのですが」
「何ですか?」
「例え貴女様が白のグリモワールの継承者でなくとも変わらないと思います」
「え?」
サリアンはメアリの考えている事を言い当てる。
「貴女様は、真実を知って…孤独でも人を恨めない方です。母君と同じように」
「でなければ治癒師の称号は剥奪されていたでしょう。女神によって」
「でも!」
「人が弱く欲に溺れますが…理性という鎖があるのです。落ちた者はその者の心の弱さです。貴女様が悪いわけではありませぬぞ」
ペトロの言葉は正しくも厳しい言葉だった。
「貴女は様を教皇猊下と知らず慕う方はいませんか?」
「います…」
学園の外にはメアリを愛してくれる人は沢山いた。
「団長さん…」
「そうです。貴女様自身のご縁を大切にしなくてはなりません」
「はい」
戦場で共に過ごした第三騎士団と過ごした時間。
メアリにとって大切な時間だったのだから。
「私は二人に償いをして欲しいです。私は二人を罰したいわけではありません。ですが貴族として、この国を守る力を持つ者として」
(私は二人にちゃんと自分の犯した罪を償って立ち直って欲しい)
この思いは自己犠牲でも献身でもない。
心からの思いだ。
変わってしまった二人だけど、願ってしまった。
(女神様、私は!)
メアリの強い思いが白のグリモワールが反応するかのように再びページが捲られる。
「光が飛び散って…」
「これは黄金の杖!」
メアリの手元に来たのは黄金の杖だった。
神話の時代に女神が手にした聖杖とまったく同じだった。
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