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第三章真実の聖女
1転移の先
しおりを挟むメアリに頭を下げる一同は同じ装いをしていた。
(もしかしてこの船は…)
正教公国が使用する船に、特徴的な旗。
そして乗っているのは神官や聖職者に貴族達も法衣を着ている。
「我らが主!」
「へ?」
「白のグリモワールを持ちし乙女…地上の女神に代弁者の教皇猊下様。お会いできて光栄でございます」
「あっ…あの」
顔を上げた老人は合った事はないが教科書にも載っている法王だった。
「ああ、なんという事だ。エレンデール王国で強い星の力を感じたが、本当だったとは」
「法王様、このタイミングで猊下が我らの前で現れてくださったのは、この窮地をお救い下さる為では」
「猊下、どうか我らを…神官達をお救いください」
再び頭を下げられる。
相手は数多の正教公国のトップであり法王だった。
「あっ…あの、頭を上げていただけませんか?とりあえずお話をお聞かせいただけないでしょうか」
「申し訳ありません」
法王・ペトロはあくまでメアリに礼を尽くしながら状況を話した。
それは一か月前の事。
南の国で病が流行り出し、不治の病とされていた船乗りの病がついに陸地でも起き始めた。
打開策を考え、これ以上病が広がらないように対策をしたのだ。
来月にはエレンデールへの視察があるので病の事に関しても協力を望んだのだが、二週間前にこの船で病の初期症状にかかったものが出始めたのだ。
このままでは国に行くことも難しくなった。
そんな中一人、また一人と病に苦しみ出したのだ。
「猊下、どうか貴方様の…」
「その病は薬で治りますよ」
「「「は?」」」
深刻に話す彼とは裏腹にメアリは鞄から薬草を出した。
「その病は船乗りの病、 壊血病 です。長期間の船の旅では栄養が足りない事で発症します。ですがこの薬草を水に湿らせて飲めば治ります」
手に持っている薬草はメアリは長年開発したものだ。
十年前にもこの病気は問題になったが、栄養が足りず不足している栄養素を補うために改良し、尚且つメアリの治癒魔法を導入してできたのだ。
「ポーションに混ぜればすぐ直るかと…よろしければ差し上げます。ただ手持ちが少ないから領地に行けばもっと用意できますので」
「何という事だ…」
「流石、大賢者様と呼ばれたお方は先の先まで読まれて…もしやこれを届ける為にわざと」
(いや…間違えただけなんですけど)
勝手に勘違いする彼等。
特に彼等は勘違いが酷かったのか勝手に解釈した。
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