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第二章魔導士の条件
25コパンの思い出②
しおりを挟む店に入って来た少女は服装も汚れ、疲れた表情をしていた。
「申し訳ありません。パンはもう…」
「じゃあ、それは?」
「これは売れるような物ではなく」
一度床に落ちたパンだった。
まだ食べられるが、客に出せる物ではなかったが。
「お腹が空いているんです。騎士団の皆さんも空腹で…お願いします。売ってください」
「しかし、形も崩れていて…床に一度落ちた物でして」
「大丈夫です!砂も汚れもないし、消毒もすれば食べれ…愛しのコッペパン!」
ぐいぐいと押してくる少女は袋に入れられていたコッペパンを見つける。
「袋に入っている事は…見切り品かお買い得商品ですね!」
「いや、これは…」
「全部ください!このお買い得パンを全部買います…皆さん!パンですよ!お買い得なパンが沢山です」
外に出て既に空腹でへとへとな騎士達が立ち上がる。
「「「うぉぉぉ!」」」
既に限界だったのか、騎士達はパン屋に押しかけて来る。
「パンをくれ!ミルクもあるぞ」
「おい、こっちのパンは甘い香りが」
次から次へと流れ込む、捨てようとしたパンを見切り商品を勘違いして硬貨を置いて行く。
「うめぇ!」
「本当だ!ここのパン最高じゃねぇか」
騎士の大半は平民や下級貴族が多く、パンに親しみのある騎士が多かった。
「今度からここで買うか」
「ミルクも美味いし安いじゃねぇか」
「私のコッペパンは食べないでください!」
少女のおかげで処分するはずのパンは無駄にならなかった。
念のために床に落ちたパンは売れないと告げたが、騎士団の騎士は捨てるぐらいならと奪い、硬貨を押し付けたのだった。
「爺ちゃん、あの人はパンの妖精だ」
「そうだな…私達のパンをあんな美味しそうに食べてくれるとは。ありがたい」
パン職人だけでなく料理人いとって一番の喜びは美味しいと言ってくれることだ。
どんなにお金に摘まれるよりも、喜んで食べてくれるのが一番幸せだった。
しかも少女のおかげでパン屋は救われた。
その日を境にそのパン屋は騎士達の御用達となり大量に注文されるようになった。
「騎士様、あそこでパンを食べられている方は」
「ああ、メアリ嬢ちゃんだ。治癒師なんだが…かなり変わり者だ」
騎士団の団長はパンをかじりながら伝えた。
「貴族様ですか?」
「ああ、辺境伯爵令嬢だ。辺境地じゃ食い物は貴重だからな。嬢ちゃんはコッペパンが大好物なんだよ」
「メアリ様…」
コパンは妖精の名前をしっかり刻み込んだのだった。
そしてその一年後、コパンは学園のパン職人に入る事を決意した。
だがその学園でメアリの悪い噂を流れている事を知り。
かつてコパンの心を傷つけた貴族がユーフィリアと知った時は殺意を抱いたのだった。
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