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第二章魔導士の条件
22治癒師の性質
しおりを挟む王家で重宝される歴代の治癒師は時の権力者に利用されたり。
身内に搾取され利用された後に若くして亡くなった者は多かったが、真の治癒師として生涯を終えた者は最後まで愛する人に尽くした。
それこそが治癒師の性質だった。
「ソーマ殿。私の妻は治癒師として生き、治癒師として死にました。夫として苦しくもありましたが、妻は誇りをまぅとうしたのです。治癒師とはそういう者が多い」
「自己犠牲ですか…」
「第三者からは愚かというでしょう。ですが、相手を慈しむ念が強いからこそ、治癒魔法の力が強いのです」
治癒師として絶対必要な要素をメアリは全て持っている。
「私はメアリが真に命を預け、心を預けるべき相手ができたのならば、命を捨てることも厭いません」
「そんなのはあんまりです…」
「ありがとうございます」
お礼を言われる筋合いはないと思いながらもソーマは胸が苦しかった。
「ですが、メアリの真の力をアーク殿は目覚めさせる事は出来なかった」
「真の力?」
「はい、治癒師としての真の力を目覚めさせる事ができた人物こそが伴侶となる。亡き妻の遺言であり、婚約時の絶対条件だったのです」
優れた治癒師の一族の中では古い伝統がある。
治癒師を一人前にするのは大切な人を守りたいと言うゆるぎない思い。
「アーク殿との婚約において、彼が娘の真の力を目覚めさせる事ができなければ王家は婚約解消を望んでおられました…そしてメアリが復学した後に手紙が来ましてね」
「手紙?」
「学園ではメアリを始末しようとする輩がいると…所詮は子供同士の問題です。私も関与すべきではないと思いましたし…メアリがそんな事で潰させるはずはありませんので」
(まさか!)
「本当に情けをかければ調子に乗るとは…モリガン家は自分の立場を知らぬようでしてね」
笑顔なのにものすごく恐ろしい。
ティエルドはユーフィリアの態度と裏でメアリを利用している事など気づいていたが、モリガン家は悪気がないと言うばかり謝罪はない。
「恩を仇で返すのお家芸のようですからね?ならば平和的に解決してしても良いと思ったのですが」
「平和…」
「ええ、何もかも捨てて一緒になりたいのでしょうから。お膳立てをして差し上げようとね…泳がせていたのは最高の舞台を用意してあげようかと」
「最高の舞台…ですか」
「ええ、正教公国の代表の前で真実の愛を誓わせてあげるのが最高の親切かと思いましてね?その為にも私も神聖なる場に立ち会うべきかと思いましてね」
既に下準備ができている事を告げられ、ソーマは冷や汗を流す。
人を呪わば穴二つ。
あの二人が遠くない未来、どんな目に合うか安易に想像ができたのだった。
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