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第二章魔導士の条件
21お見通し
しおりを挟む例の二人に関してティエルドはどう思っているのか。
ソーマは失礼を承知で尋ねた。
普通なら赤の他人でしかない人物が問えば無礼だと怒るのだが。
「娘の身を案じてくださったことを心から感謝申し上げます」
「えっ…」
怒るどころか感謝を述べられてしまう。
「やはり王都に行かせたのは正解でしたね」
「閣下…もしや」
「結構前から知っていましたよ。困った事に先方からは遊びだと茶を濁されてしまってね…彼等の思惑も知ってしていましたが。メアリがアークを好いているのだと…責められましてね」
「なっ!」
(どんだけ屑なんだ!)
メアリの好意を利用してやりたい放題の良家に嫌悪感を抱くソーマ。
「メアリの悪い噂が完全に払拭するのは難しい。相手側はメアリの面倒を見れるのは自分たちぐらいだとも言いだす始末でね…私は頼んだ覚えはないのだが」
「へ…」
足場が凍り付きはじめる。
ティエルドの魔力は水であるが凍り魔法も使える。
「随分と舐め腐った真似をされてましてね?凍死させてやりたいと思いましたよ…ですが相手方は王家に仕える家ですし、聖騎士の称号を持つ家柄」
「しかし…」
「神は何故あのような輩を聖騎士の称号を与えたのか。私は身分が低かろうとも幸福な結婚をして幸せになって欲しいと思っています。親馬鹿ではありますが」
「ならば何故です!」
どうして今まで動かなかったのか。
ティエルドならばいくらでも方法はあったはずだ。
「一つは、私達の問題で領民を巻きこめない。だが、その問題はもうじき解消できるでしょう。そしてもう一つ」
「もう一つ?」
「メアリ自身が人を見る目を見極めなくてはなりません。男女の仲ですから…遅かれ早かれ問題は起きます」
ただ優しいだけでは貴族として生きていくことはできない。
純粋だけでは大切な物を守れない。
「メアリ自身が見極めさせたいからです。優しいだけではなく厳しい判断を下せるようになって欲しい」
「ではご息女が気づかなかったら…」
「私の娘は周りが思う程弱くありませんよ。物事の道理を理解し、役目から逃げたりはしませんよ。何も知らないと思いますか?」
利用されている事に関しては本人の解釈の仕方にすぎない。
ティエルドの言い方からソーマは察していた。
「ご息女は利用されるのも承知だと?」
「どんな形でも必要としてくれた、そして大切な友人が喜ぶ顔を見たいという思いです」
無償の愛情が深すぎた故に今回の問題が起きたのならば、あまりにも不公平だと思いたくなったソーマだった。
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