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第一章婚約破棄と白のグリモワール
26国王と理事長
しおりを挟む学園内にある一室。
エリルデード魔法学園の理事長室にて。
この学園の最高責任者であるアンドレ・エリルデード。
その向かいの席には国王がお茶を飲んでいた。
「一日で我が校の癖のある教師二人を味方につけるとはのぉ?」
「これも白のグリモワールを持つ者の資質なのでしょうか」
二人はお茶を飲みながら水晶玉で先ほどまでのやり取りを見ていた。
「初代教皇猊下、白の大魔導師様は大変な変わり者で人誑しならぬ、人外誑しと聞きます」
「同時に愚直な程に馬鹿だった。善人も悪人も変わらず手を差し伸べる方だった…されど」
この国の初代国王はその優しさに幾度なく救われた。
常に国王に寄り添う支え続けた初代白の大魔導師は理屈ではなく心を大切にして偉業を成し遂げた。
人には理解されない事もあったが、本当に大切な思いは伝わるのだった。
「光魔法は心に反応する。特に治癒は怪我だけでなく心を救う…白のグリモワールが選定した今生の後継者は見所があるのではないか」
「解りませんな。ですが、既にその才を見せ始めています」
水晶玉に映し出されるメアリを見ながら国王は祈る。
「この国の要となり、希望の欠片を消すわけには行かん…しかし直接手を下さすことは出来んが」
「陛下…」
学園内の噂、苛め問題は以前からあった。
魔力がないから虐げられる弱気生徒を救いたくともその場限りの手を打っても解決にならない。
ならばこそ生徒に権利を委ねた。
強気者が弱きものを守り支えながらも弱き者も自身で身を守る事。
立ち向かわなくてはならないのだ。
「監督生だけでは限度がある…だが、この時期に三人が揃ったのだ」
「黒と白と金のグリモワールの継承者…三人が同時期に我が校に入った。変革の時が来たのでしょうな」
国を守りそして腐敗しきった今の世を新しく作り変えるには彼等の存在が不可欠だとも判断していた。
「情けないが、今は見守るしかあるまいな」
「ええ…ですが」
理事長は厳しい表情をする。
「私達が手を出さないからと言って好き放題している彼等にはそれ相応の報いは与えますぞ」
「当然だ。完全に目覚めた時に知るだろう」
まだ半人前でしかないメアリだが、真の力に目覚めた時。
メアリを傷つけた者は立場を失い裁きを受けることになるのだが、二人は同情の余地はない。
「本来ならば治癒師を侮辱するのは許されないのだがな…」
「辺境貴族への侮辱もですが、一度痛い目に合えば解るでしょう」
国を守る立場にある辺境伯爵家の存在がどれ程大きいか。
宮廷貴族は知らなかったのだが、近いうちに別の形で彼等は痛い目に合う事になるのだった。
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