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第一章婚約破棄と白のグリモワール
20権利と義務
しおりを挟む今回の事件は未熟な生徒のずさんな監督責任と、魔獣を管理しきれなかったテイマーや騎士科の生徒にも責任が問われた。
特に在学生でありながら高位スキルを持つ生徒は、学園を守る役目を担っている。
聖騎士や魔術師も同じだった。
彼等に責任はないとは言えないのだ。
魔獣が暴走した時に魔術師や騎士達が率先して生徒を守るのが当然なのにも関わらずあの場で真っ先に行動を起こしたのは己の身を守る術を持たない治癒師しだった。
対する攻撃魔法が得意な魔術師は責められ非難された。
そして学園の悪女という噂はでっち上げではないか?
ミカエルやリーシアが婚約者のいる男性に手を出した生徒を悲劇のヒロインのように語るのもおかしいと思うようになった。
元より貴族の婚姻は政略結婚、
王の決定に従わず好き勝手して不義を行い、その二人を褒めた生徒もおかしいのだ。
噂を面白おかしく騒いだのは宮廷貴族達が大半だったので辺境貴族の差別意識の強さ故にメアリは利用されたのという声も上がり、メアリは被害者と思われるようになった。
対する悲劇のヒロインとされたユーフィリアは一部の生徒を覗き冷たい視線を送られるようになった。
「ユフィ、大丈夫か?顔色が悪い」
「ええ、大丈夫よ」
アークが傍で肩を抱き寄り添いながらも、周りの視線が辛くて仕方なかった。
数時間前までは聖女として愛され慕われ、ちやほやされていたのに今では近づく者はいない。
「気にする事はない。噂だ」
「そうね」
噂とは恐ろしいもので、時として言葉という凶器で人を殺す事ができる。
偽りを真実に塗り替え、その噂は次第に心を蝕んで行くのだ。
特に貴族社会に生きる者にとっては命取りで宮廷魔術師にとっても致命傷だった。
その結果。
「君達の星を二つ剥奪する」
「「は?」」
生徒指導室に呼ばれた二人は今回の事で星を奪われることになった。
「言うまでもなく、アーク・カートン。君は聖騎士でありながら今回の魔獣の暴走に気づかなかっただけではなく非難していたそうだな」
「それは…」
「同じく、ユーフィリア・モリガン。君も魔術師として真っ先にかけつけなくてはならなかった。なのに生徒を守らず何をしていた」
「申し訳ありません」
宮廷魔術師でもあるユーフィリアは権利もあれば義務も発生する。
魔獣が暴走した時は魔法で抑え込まなくてはならないのに、いきなりの事で対応できなかったのだ。
「今回彼女が魔獣を鎮め、結界を敷いてくれなければ死傷者が出ただろう。しかも彼女が命が下で救った方が彼女に大変感銘を受けていてね…素晴らしい生徒だとおっしゃってくれたおかげで学園は傷つかずに済んだ」
「そっ…それは」
「聖騎士と魔術師の肩書は重い。よって星二つを没収する」
権利を持つ者は役目を果たすのが義務。
二人はその義務を果さなかったので何も言えなかったが納得はできなかった。
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