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第一章婚約破棄と白のグリモワール
プロローグ
しおりを挟む海に囲まれた島。
北の最果てと呼ばれるバルセルク領地。
ここは最後の砦と言われてる領地で辺境地の中でも守りの一つ。
そこから海を眺める一人の少女。
メアリ・バルセルク。
辺境伯爵令嬢でもあるが、彼女には治癒師として派遣され、ようやく帰還したのだ。
バルセルク一族はこの建国される前からこの地に住んでいた魔導士の家系だった。
しかし困った事に、メアリは魔導士の家系に生まれながらも攻撃魔法は一切使えなかった。
バルセルク家は早くに妻を亡くし、父は後妻を迎えなかった事から跡継ぎに困り婿養子を迎えることになった。
幼馴染で聖騎士というスキルを持つ。
伯爵令息のアーク・カートン。
優れた騎士でメアリの幼馴染で五歳で婚約をした。
政略結婚であるが、メアリはアークを愛していたし、アークもメアリを大切にしていたので関係は良好と思っていた。
そして二人を幼少期から見守ってくれた親友。
宮廷魔導師でもあるユーフィリア・モリガン。
戦場に出ることが多く王都を離れることが多いが、その都度ユーフェリアが支えてくれていた。
しかしここ二年程、アークからの手紙が滞っていた。
「久しぶりに二人に会えるわ。楽しみだわ」
大好きな二人に会えると思い、心をウキウキさせていた。
「えっ?アークは学園に?」
「はい、長期のお休みも学園に留まっておられるとか」
「そう…忙しいのかしら」
今は夏休みで学生は帰省しているのだが、アークは学園に留まり今年は学園の寮で過ごす事になっていた。
「お嬢様…」
「なぁに?」
「このところ、アーク様とご連絡は取られていますか?」
「戦場だから手紙が届くのが遅いのかもしれないわ」
先日まで国境近くまで派遣されていたが手紙はまだ届いていないのかもしれない。
「ユフィにも会いたかったけど、仕方ないわね」
「お嬢様…」
魔物討伐の為に治癒師として派遣されることが多い為学校も休学してしまった。
「そうだわ。アークが来られないなら私が会いに行けばいいのよ」
「お嬢様!今から学園に行かれるおつもりで?」
「そうよ。忙しいなら少し顔を見るだけででもいいの。二人に会いたいの」
「…かしこまりました」
ずっと戦場にいて、真面な学園生活も遅れずにいるメアリを気の毒に思っている傍仕えの侍女、セイラは止めることができなかった。
「学園で悪い噂が流れているけど…大丈夫かしら」
メアリが知らない所で学園では不穏な噂が流れているのを知らなかった。
一年の休学。
たかが一年、されど一年であるのだが――。
勝手に大丈夫と信じ込み、再会を楽しみにしていたメアリは人の心は移りやすい事を知らずにいたのだった。
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