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第一章婚約破棄事件
26.先手
しおりを挟む私と旦那様と侯爵様で結託して、リリアンお嬢様とレオナルドの婚約を結ぶべく行動に出ることにしました。
特に私達から何もしなくても既に社交界では噂になっています。
皇太子殿下とリリアンお嬢様の関係が良くな事を。
「伯爵夫人!聞きましたわよ」
「私達心配していて…」
涙ぐみながら私の元に駆け寄って来たのは中立側の貴族夫人。
彼女達は皇族派であるが中立を貫いているが、今回の事は無視できないと思ったのでしょう。
「ご子息が侯爵令嬢を庇われて…あのような」
「なんて酷い事を」
「最近の彼等の行動は目に余りますわ」
既に学園での事件は社交界に流れ、レオナルドは社交界にも学園にも顔を出せない程重傷を負っていると噂になっています。
私も社交界に顔を出してもすぐに席を立つので余程酷いのだと思われているのでしょう。
「息子の様態は安定しておりますので、どうか…」
「いいのですよ。無理をなさらないでください…それにしてもあんまりですわね」
「伯爵夫人は帝国に貢献している夫人であることは誰もが知ってますのに…こんな仕打ちを。暴行をした子息達もなんのお咎めもないそうで」
「裏では皇太子殿下が動いているとか」
「正直、皇族派の貴族ですが…私は皇太子殿下を支持できませんわ」
良識的な考えを持つ方ならば、普通の事でしょう。
今まで私は帝国の経済に貢献して来ましたし、騎士団にも多額の寄付をしてきました。
皇族の為ではなりません。
全ては国の為、国民の為にして来たのです。
私を評価してくださる方は多いのです。
ですからこの度の出来事は、私やアスガルト伯爵家の裏切り、もしくは皇帝陛下が我が伯爵家を蹴落とそうとしたと思われても仕方ないのです。
「陛下もどうしてこのような真似を」
「私は不評を買ってしまったのでしょうね…やはり女がでしゃばるなと言う事でしょうか」
「まぁ!伯爵夫人を押し立てたのは陛下自身ですものありえませんわ」
「そうですわ」
不安な表情をしながらアピール。
あくまで陛下を批難せずに自分が悪いと言えば、問題ない。
「実は、しばらく私は公の場には出るのを控えようかと思いまして」
「え?」
「どうしてですの?」
「こんなことになってしまって…私は陛下の不評を買ってしまいましたので、しばらく社交界には出ないようにしようかと。邸で謹慎することになりました」
「まさか、皇太子殿下に何か…」
「いいえ、全ては私が悪いのです。この度の事故も、私がリリアン様をお守りするように強く言い過ぎたために息子は皇太子殿下の側近の方々の怒りを買ってしまったのでしょう…リリアン様を庇う余り」
「そんな、リリアン様に落ち度はありませんし。ご子息も立派な行動をされたのですよ」
「そうですわ!それなのに…」
悲し気な表情を見なせながら私は頭を下げる。
「解ってくださる方がいらっしゃるだけで嬉しゅうございます」
そう言い残して私はその場を後にしました。
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