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第一章婚約破棄事件
19.興味もない
しおりを挟む今さら何をしに来たのか興味なんてありません。
既に彼は過去の人であり、深くかかわるつもりは一切ありません。
「それで、どういったご用件ですの?」
「奥様!」
「下がりなさい、我が商会はどのようなお客様も平等に接します。それが商人の品格です。ですが、お客様ではないならばお帰りくださいませ。我が商会を脅かす輩であれば…」
ブリリアント商会は私と旦那様でここまで大きくしたのです。
勝手は商売人は金儲け主義で、嫌われ者だと言われていましたが、人様に喜んでいただける素晴らしい職業だと世に知らしめるべく務めて参りました。
十年のという年月をかけて。
「私はこの商会の女主。旦那様の留守中に荒らすならば、出る所に出ますわよ」
「レティー、何を言っているんだ。これから君と俺はやり直すんだ…過去の事は忘れよう。な?」
「アスガルト夫人とお呼びくださいませ。軽々しく愛称で呼んで欲しくありませんわ」
「何を言って…」
私が何を言っても聞こうとせず手を伸ばそうとする。
「この無礼者めが!奥様に…」
マークがついにブチ切れ寸前です。
彼が一度怒ると止めるのは至難の業なのですが、ヴィルマも掃除用の箒を取り出し戦闘態勢に入り、リゼットはガーターベルトに隠しているナイフを取り出しています。
これはでは商会内で暴れてしまいす!
私に手が伸びようとした時でした。
「ぐあぁぁ!」
後方から薔薇が一輪突き刺さりました。
ジャスパーの腕にブスッと。
「旦那様!」
「レティー、遅くなってすまない。君に相応しい薔薇を選んでいて遅くなった」
私を抱きしめながら薔薇を見せてくださいました。
新種の薔薇でどれも豪華絢爛でした。
「まぁ、なんて美しいのでしょう」
「君の美しさには劣るさ」
旦那様は私の頬にキスをしながら何時ものように気障ったらしい言葉を言いますが、十年もすれば慣れました。
「私の留守中に、大事な奥様に手を出すとは…役人に突き出せば確実に裁判沙汰になるだろう」
「裁判!そんな俺は…」
「何処の浮浪者か知らないが、彼女は我がアスガルト伯爵家唯一の妻。その意味を解っているのか」
旦那様はジャスパーを睨みつけ、今すぐ殴る勢いです。
しかし、それはなりません。
「お止めください」
「レティー!やっぱり君は俺を…」
「旦那様の手が汚れます」
この後に及んで私がジャスパーに気があるわけがないでしょうに?
何処までも自惚れ屋で勘違いなのかしら?
「例え相手が浮浪者で、犯罪者であろうとも手を出せば噂になりますわ。こんな男の為に旦那様の名誉が傷つくなんて耐えられませんもの」
「何だと貴様!」
本当に学習しない人。
私を罵倒しても自分で自分の首を絞める行為だと何故気づかないのかしら。
本当に愚かです。
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