上 下
31 / 48
第一章婚約破棄事件

19.興味もない

しおりを挟む




今さら何をしに来たのか興味なんてありません。
既に彼は過去の人であり、深くかかわるつもりは一切ありません。


「それで、どういったご用件ですの?」

「奥様!」

「下がりなさい、我が商会はどのようなお客様も平等に接します。それが商人の品格です。ですが、お客様ではないならばお帰りくださいませ。我が商会を脅かす輩であれば…」


ブリリアント商会は私と旦那様でここまで大きくしたのです。
勝手は商売人は金儲け主義で、嫌われ者だと言われていましたが、人様に喜んでいただける素晴らしい職業だと世に知らしめるべく務めて参りました。


十年のという年月をかけて。

「私はこの商会の女主。旦那様の留守中に荒らすならば、出る所に出ますわよ」

「レティー、何を言っているんだ。これから君と俺はやり直すんだ…過去の事は忘れよう。な?」

「アスガルト夫人とお呼びくださいませ。軽々しく愛称で呼んで欲しくありませんわ」

「何を言って…」

私が何を言っても聞こうとせず手を伸ばそうとする。


「この無礼者めが!奥様に…」

マークがついにブチ切れ寸前です。
彼が一度怒ると止めるのは至難の業なのですが、ヴィルマも掃除用の箒を取り出し戦闘態勢に入り、リゼットはガーターベルトに隠しているナイフを取り出しています。


これはでは商会内で暴れてしまいす!


私に手が伸びようとした時でした。


「ぐあぁぁ!」


後方から薔薇が一輪突き刺さりました。


ジャスパーの腕にブスッと。


「旦那様!」

「レティー、遅くなってすまない。君に相応しい薔薇を選んでいて遅くなった」

私を抱きしめながら薔薇を見せてくださいました。
新種の薔薇でどれも豪華絢爛でした。


「まぁ、なんて美しいのでしょう」

「君の美しさには劣るさ」

旦那様は私の頬にキスをしながら何時ものように気障ったらしい言葉を言いますが、十年もすれば慣れました。


「私の留守中に、大事な奥様に手を出すとは…役人に突き出せば確実に裁判沙汰になるだろう」

「裁判!そんな俺は…」

「何処の浮浪者か知らないが、彼女は我がアスガルト伯爵家唯一の妻。その意味を解っているのか」


旦那様はジャスパーを睨みつけ、今すぐ殴る勢いです。

しかし、それはなりません。

「お止めください」

「レティー!やっぱり君は俺を…」

「旦那様の手が汚れます」


この後に及んで私がジャスパーに気があるわけがないでしょうに?
何処までも自惚れ屋で勘違いなのかしら?


「例え相手が浮浪者で、犯罪者であろうとも手を出せば噂になりますわ。こんな男の為に旦那様の名誉が傷つくなんて耐えられませんもの」

「何だと貴様!」


本当に学習しない人。
私を罵倒しても自分で自分の首を絞める行為だと何故気づかないのかしら。


本当に愚かです。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元婚約者は入れ替わった姉を罵倒していたことを知りません

ルイス
恋愛
有名な貴族学院の卒業パーティーで婚約破棄をされたのは、伯爵令嬢のミシェル・ロートレックだ。 婚約破棄をした相手は侯爵令息のディアス・カンタールだ。ディアスは別の女性と婚約するからと言う身勝手な理由で婚約破棄を言い渡したのだった。 その後、ミシェルは双子の姉であるシリアに全てを話すことになる。 怒りを覚えたシリアはミシェルに自分と入れ替わってディアスに近づく作戦を打ち明けるのだった。 さて……ディアスは出会った彼女を妹のミシェルと間違えてしまい、罵倒三昧になるのだがシリアは王子殿下と婚約している事実を彼は知らなかった……。

「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜

水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。 メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。 最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。 それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。 しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。 そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。 メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。 そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。 次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。 男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。 そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。 「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

「お前は聖女ではない!」と妹に吹き込まれた王子に婚約破棄されました。はい、聖女ではなく、『大聖女』ですが何か?

つくも
恋愛
王国リンカーンの王女であるセシリア。セシリアは聖女として王国を支えてきました。しかし、腹違いの妹に「本当の聖女ではない」と吹き込まれた婚約者の王子に婚約破棄をされ、追放されてしまうのです。 そんな時、隣国の王宮にセシリアは『大聖女』としてスカウトされます。そう、セシリアはただの聖女を超えた存在『大聖女』だったのです。 王宮でセシリアは王子に溺愛され、『大聖女』として皆から慕われます。小国はセシリアの力によりどんどん発展していき、大国に成長するのです。 一方、その頃、聖女として代わりの仕事を担うはずだった妹は失敗の連続。彼女にセシリアの代わりは荷が重すぎたようです。次第に王国は衰えていき、婚約者の王子からは婚約破棄され、最後には滅亡していくのです。 これは聖女ではないと追放されたセシリアが、ホワイトな王宮で大聖女として皆から慕われ、幸せになるお話です。

自分の完璧に応えられない妻を売った伯爵の末路

めぐめぐ
恋愛
伯爵である彼――ボルグ・ヒルス・ユーバンクは常に、自分にとっての完璧を求めていた。 全てが自分の思い通りでなければ気が済まなかったが、周囲がそれに応えていた。 たった一人、妻アメリアを除いては。 彼の完璧に応えられない妻に苛立ち、小さなことで責め立てる日々。 セーラという愛人が出来てからは、アメリアのことが益々疎ましくなっていく。 しかし離縁するには、それ相応の理由が必要なため、どうにかセーラを本妻に出来ないかと、ボルグは頭を悩ませていた。 そんな時、彼にとって思いも寄らないチャンスが訪れて―― ※1万字程。書き終えてます。 ※元娼婦が本妻になれるような世界観ですので、設定に関しては頭空っぽでお願いしますm(_ _"m) ※ごゆるりとお楽しみください♪

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。  わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。  ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。 「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」  元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。  貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。  なにがあったのでしょうか……?

駒として無能なお前は追放する?ええ、どうぞ?けど、聖女の私が一番権力を持っているんですが?

水垣するめ
恋愛
主人公エミリー・ヘミングスは男爵家の令嬢として生まれた。 しかし、父のトーマスから聖女として働くことを強制される。 聖女という地位には大きな権力と名声、そして金が入ってくるからだ。 エミリーは朝から晩まで働かされ、屋敷からも隔離され汚い小屋で暮すことを強要される。 一度駒として働くことが嫌になってトーマスに「聖女をやめたいです……」と言ったが、「駒が口答えするなっ!」と気絶しそうになるぐらいまで殴られた。 次に逆らえば家から追放するとまでいわれた。 それからエミリーは聖女をやめることも出来ずに日々を過ごしてきた。 しかしエミリーは諦めなかった。 強制的に働かされてきた聖女の権力を使い、毒親へと反撃することを決意する。

処理中です...