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第一章婚約破棄事件

12.噂

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学園生活はどう過ごしているのか、不安を抱きながらも我がアスガルト伯爵家は子供の自立心を育むためにある程度は見守る事にしているのです。



そんな中、夫人会のお茶会で不穏な噂を耳にしました。


「聞きまして、あの噂」


「嘆かわしいですわ。何でも学園に時季外れに転入生が入ったのですが…婚約者を持つ男性と親し気にしていらしたとか。そのことが原因でその令嬢は学園にこれなくなってしまいして」


「あろうことに婚約者の男性は彼女を責めたそうです」

聞けば聞く程最低な方ですね。
浮気をした事実はないにしても、非はどちらにあるか明らかです。


「アスガルト伯爵夫人もお気をつけください。皇太子殿下を筆頭に多くの男性はその少女を囲んでいる噂もあります。下手に関わればどうなるか」

「娘は心配ないかと」

セレニティーは色気よりも研究です。
男性に全く興味がないのですし、生徒会と言っても関りがありません。


「心配なのはリリアン様です」

婚約者が、ゲーム同様に浮気男であるならば。

さぞ傷ついているのでは。


「いえ、それはありませんわ」

「ないですわね」

「え?」

ですがお二人共冷めたお茶を飲みながら断言しました。

「婚約と言っても話だけですわ。それにリリアン様が殿下に対する思いはミジンコ程度です」

「ええ、侯爵様はあの通り娘命の方ですし。万一の時はご息女を跡継ぎにするか…ねぇ?」


二人共ニヤニヤ笑っていますね。
何がそんなに楽しいのか解りませんが。


「それよりも学園にこれなくなったご令嬢ですわ」

「ええ、私達は夫人会の幹部として、捨て置けません」


夫人会は学園で言う保護者会も担っているのです。
いわゆるPTAと同組織に入っておりますので他人事ではございません。


「同じ娘を持つ身としては許せませんわね」

「同感ですわ。アスガルト伯爵夫人。何かいい考えはございませんか?」

夫人会の二強と呼ばれるお二人は何故私にお尋ねになるのでしょうか。

私よりも人脈があると言うのに。


「適任者がいらっしゃるのでは?」

「何をおっしゃいますの?侯爵様を筆頭に、数多の貴族を誑し込んだ方が」

「そうですわ。私達は子供達を守る為に戦わなくては。男尊女卑は時代遅れだと示した貴女がいるのですから」

何処からか盃を取り出し乾杯する勢いです。


この時はまだ、二人は冷静でした。


しかしその一週間後。


「喧嘩を売られましたわ」

「私もです」


お二人のご令が突如婚約破棄を言い渡されたそうです。
理由は学園にこれなくなったご令嬢と同じ理由で噂の転入生に心を奪われたそうです。


「聞けば、例の女子生徒を苛めたなどと言いがかりを」

「浮気をしておいて、何を言うのかしら!こんな屈辱許せませんわ!」

ハンカチを噛みしめる二人は旦那様に相談したらしいのですが。


「夫は浮気は男の甲斐性だなんて言いましたわ」

「あろうことにも娘が婚約者の心を繋ぎ留めなかったのが悪いと私まで責められましたわ!」


味方だと信じていた旦那様にそんな言い方をされれば傷つきますね。


「元より夫婦仲は冷めきってましたが…あそこまで使えないとは」

「え?」

「娘の面子を守る事もしないとは最低ですわ!」

「お二人共…」


事態は最悪な方向に進んで行きました。


そして社交界では婚約破棄流行ブームとなりました。



「冗談じゃないわ」

「ですよね」

その所為で、服飾業界では打撃を受けたのは言うまでもありません。
商業ギルドでも、最近はドレスの発注が減った事で売り上げが落ちていたのです。

婚約破棄を宣告されて、もう着飾る事をしたくないと。
意味がないと部屋に引きこもってしまっていると言うではありませんか。

「商売云々の問題よ!女は死ぬまで美しくあるべきよ。見た目ではなく中身も」

「はい」

「誰かの為に綺麗になるのではなく自分の為に綺麗にならなくては」


出会ってから十七年。
未だに美しく輝いていいらっしゃる商業ギルドの副ギルド長は若々しいです。


その言葉には私も賛同いたします。
男性にフラれたからと言って投げやりになって欲しくない。

しかも男性の浮気で人生諦めて欲しくないのです。


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