訳あり伯爵夫人の憂鬱な溜息~旦那様が今日もブチ切れそうで困っています!

ユウ

文字の大きさ
上 下
15 / 48
第一章婚約破棄事件

3.玉の輿

しおりを挟む




アスガルト家は旧貴族派と新貴族の間にいる中立的な立場にありました。
表向きは皇族派となっておりますが、どちらにつくわけもなく、バランスを保っているのが現状です。


私の実家、クラーク家。
今は没落したも同然の状況ですが皇族派。

先代皇帝陛下に仕えておりました。
父は貴族の中でも酔狂だと言われており、下町に出るのを好んでいました。


父は貴族でありましたが母は平民だったらしく。
しかも私は連れ子だったので血のつながりはなかったのですが、父は私を我が子同然に可愛がり愛情を注いでくださいました。


私もまだ小さかったから気づきませんでした。
まぁ、周りの無神経な大人達が私のいる前でこれ見よがしに話していたので嫌でも気づかされました。


だとしても父は私を大事に育ててくれました。
父はどうにも人が好過ぎたのもあってか、友人に騙され多額の借金を負わされ過労死してしまいました。

ですが、自分に万一の時があった時の為にと財産を残してくれました。
しかしその財産も大富豪や名のある貴族からすれば莫大な資金と言い難いのでした。


しかも私は実子ではなかったので爵位を継ぐことはできません。
まだ社交界デビューもしていなかった事もありクラーラ子爵家を継承できなかったのです。

そう言った理由もあり私との婚約にはメリットがないからこそジャスパーは婚約解消を願ったのですが、破棄に持ち込みたかったのは世間体でしょうね。

解消では双方に円満だと見せたかったのでしょうが、破棄となれば片方に過失があったと見なされます。



ですが――。



「人生とは解らないものです」


「どうしたんだ?」

「いいえ、私は玉の輿に乗ってしまったのですから」


私は現実主義です。
童話のお姫様物語を否定する気はありませんが、俗にいうシンデレラストーリーには無縁だったのですが。


「没落した私が成り上がってしまいましたし」

「正式な言い方ではないな。父君は元より伯爵の地位を賜る予定だったのを事前に断っていただけだ」

父が亡くなって一年後。
私が婚約破棄をされた二か月後に、王宮からとある方が訪ねていらっしゃいました。


実は生前に父が過労死するきっかけたになった事業の工事で事故が起きました。
火元責任者は父でその責任を取るべく、財産の半分を奪われた後に父は無理に働き無くなりました。

その後にも事故が続き財産を更に差し押さえられたと思えましたが、その凍結は解かれたのです。


「事故の責任はお父様ではない事が解った事で、父の財産は戻りました。しかも父は自分の所為ではないことを解っていたとは」

「ギルド達を守る為にわざと自分の過失にしたとは。普通は無理だ」


「その後大変でした」


そのご友人がやんごなき身分の方でした。


「私の事情を知った後に泣くわ、怒るわ、で大変でした。お客様のクレーム処理は得意なのですか、あのように起伏の激しい方は初めてでして」

「それで片付けるのは君ぐらいだ。相手が公爵閣下だぞ」

「はい、驚きましたが。ビジネスチャンスでした」


前世では思いもよらないタイミングで大企業の社長と出会う事もありましたのでチャンスを逃すまいと手を伸ばしました。


「チャンスの神様の前髪を鷲掴みしました」

「鷲掴みどころか、引きずり出す気だっただろ」

当然です。
この私が目の前のチャンスを見す見す逃しましょうか?

「それに父の死因は過労死ではありませんでした。元より持病を患っていたのです。誰も悪くなりません」

「そういう所は父君に似たんだろうな」


困った表情で私を抱きしめるケンの言いたいことが解りかねます。
私は父に似ていたのでしょうか?


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」  男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。  将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。  そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。  リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。  エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。  カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。  事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。 「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」  荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。  だからエナは宣言することにした。 「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」 ※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

婚約破棄だと言われたので喜んでいたら嘘だと言われました。冗談でしょ?

リオール
恋愛
いつも婚約者のそばには女性の影。私のことを放置する婚約者に用はない。 そう思っていたら婚約破棄だと言われました。 やったね!と喜んでたら嘘だと言われてしまった。冗談でしょ?

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

完結「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」

まほりろ
恋愛
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

新婚早々、愛人紹介って何事ですか?

ネコ
恋愛
貴方の妻は私なのに、初夜の場で見知らぬ美女を伴い「彼女も大事な人だ」と堂々宣言する夫。 家名のため黙って耐えてきたけれど、嘲笑う彼らを見て気がついた。 「結婚を続ける価値、どこにもないわ」 一瞬にしてすべてがどうでもよくなる。 はいはい、どうぞご自由に。私は出て行きますから。 けれど捨てられたはずの私が、誰よりも高い地位の殿方たちから注目を集めることになるなんて。 笑顔で見返してあげますわ、卑劣な夫も愛人も、私を踏みつけたすべての者たちを。

処理中です...