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序章~出会い

7.大工一家篭絡

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事前の調査は済ませました。
服飾品店は物流が止まってしまった事で値段を上げなくならず。


三年前から社交界では革のコートが流行っているのですが、価格が高く。
手入れにも時間がかかります。


何より思いし臭うのです。
ならばそのデメリットを狙って私はある提案を試みました。


「ご苦労様です」

「ああ、嬢ちゃん。作りはこんな感じで良いか?」

「はい、素敵な設計をありがとうございます」


職業紹介所ハローワークで知り合った大工一家。


モッコロ一家。
お父様が大工ギルドの中でもマイスターという地位だった方ですが、病気と年齢故に現役を引退しましたが、その腕はまだ健在でした。


奥様は設計士でもあるそうで、素晴らしい目利きをお持ちでした。


「しかし釘無しで家を作って欲しいなんてね」

「すべてではなくても構いませんが、できるだけ長い間住みたいので傷をつけたくありません。100年以上住める家にしてください」

「おう、嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか!大工妙に尽きるぜ!おら馬鹿息子、気合を入れろ」

「おい、また腰を痛めるぞ!大人しくしろ」


喧嘩しながらも絵にかいたような仲睦まじい様子ですね。

「して奥様」

「何ですかお嬢様」


「実はギルドの奥様の長と見込んでお願いがございます」

職人の奥様はネットワークが広いのでこの際使える物は使わせていただこうかと覆います。


「棟梁、こちらお気持ちでございます」

「こりゃ!上物の酒じゃねぇか!」

「大変なお仕事と長いお付き合いをさせていただくのです。この仕事が終わった暁には棟梁のお弟子さんにも大きな仕事をお任せしたいと思っております」


「なんて気前のいいお嬢ちゃんだ!こりゃ死ぬ気でやらねぇとな」

大工ギルド口説くならばまずは棟梁を口説き落とすべきです。
そうすればお弟子さんや関係者の方は味方になってくれるでしょう。

赤字は覚悟。
長い目を見て計画をした後に勝負に出るべきです。



そして約束の期日。



「レティちゃん!大変よ!」

「いかがいたしましたか副ギルド長。今お茶を淹れておりますのでお待ちください」

「そうじゃないのよ!貴女の考案した綿織物のコートが話題になっているそうよ!」


新作のお披露目前に宣伝を大工ギルドの奥様衆にお願いしました。
そのおかげで大流行となり、しかも外で働く奥様は革よりも軽くて暖かく手入れのしやすいコート。

しかも美しく見えるデザインに工夫をしておりますので大人気になりました。
ついでに革のコートは収納するのも大変ですので、我らの勝利となりお客様は一気にこちらに流れたのです。


「革織物の独占販売をしているブリリアントも綿織物はまだ踏み切っていなかったから文句が言えないわ!」

相当目の敵にしていたのでしょう。
今回の勝負はこちら側の勝利となりましたが、まだ油断はできません。

「次の勝負に出ます」

「え?もう?」

「この流れを止めてはなりません。次なる織物で勝負をしてすべての織物独占をするのです」


私の調べによれば、あちらの織物産業はかなり手広くしているようですが、相手は貴族が多いでしょう。


しかしアセリア帝国の9割は平民です。
貴族だけの商会など経済の風向きが悪化すれば意味がありません。


「商売とは、人を幸せにしてなんぼ。職人さんが作った商品を一つでも多く皆様の手元に運び喜んでいただくのが私達の勤めです」

「レティちゃん…」

「多くの人を幸せにしてこそ商売は成り立つのです」


一人は皆の為に、皆は一人の為にです。



ですが私は彼を甘く見ていたようです。


「お久しぶりですねレディー」


相手は中々の強者でした。


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