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第七章

2.私達の判断~ジリアンside

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ずっと愛そうと思った。
我が子として大事に愛そうと思ったけど。

私はあの子を本当の意味で愛せなかったのかもしれない。



「陛下、御決断をお願い申し上げますわ」

「トリアノン夫人」

「私は陛下のご命令通りご息女を成人までとの約束でしたが。こうなった以上は」


「待ってくれトリアノン夫人…そう判断を急がなくとも」


この方はまだこんな事を言っているのか。
既に王都内で生きる事は不可能だし、一番安全な道も自信で壊してしまった。


「今後はバミューダで一生を過ごすでしょう」

「バミューダで等!」

「では罪人を普通の修道院に入れるのは不可能です。カトレア修道院から追い出され、他国からも留学を断られた時点で既に道はありません」

「ならば、貴女の実家…」

「彼女は私の姉を罵倒いたしました。領民は彼女を認めないでしょう」


ずっと姉を貶して来た。
領主としての勉強もしようとしなかった。

「むしろ出家してより厳しい環境で過ごされる方が安全です。彼女を危険視する者も多いですので」

「そんな冷たい事を言わないでくれ。貴女も王族派の…」

「お言葉ですが陛下」


その時だった。
ずっと沈黙を守っていた旦那様が言葉を放つ。

「我がトリアノン家は中立側です。王族派でも貴族派でもありません」

「なっ!」

「学生時代からの友人で王として仕えて来ましたが、どの派閥にも入っていません。故にご息女を任されたのも致し方ないと思っていました」

「ならば…」

何処までも他人を頼る人。
我が一族がどの派閥にも入っていないからマリアンヌ様を私達に任せたのだ。

だけどいざ任せて陛下はマリアンヌを公爵家の跡取りにと押して来た。
当初はエリーゼが生まれて間もなくで魔力が極端に低かったから。


貴族の中では魔力が低い子供は短命だったこともあるから陛下もエリーゼは成人する前に亡くなると思ったのでしょう。


だけど、誤算だったのはエリーゼは健康で医者い要らずな程元気だった。

「大事な娘を傷つけ他者を慈しめないあの子をなんとか愛そうと努力しましたが無理でした。既に罪を重ね過ぎたのです」

「お前の力なら…」

「堂々と真実を捻じ曲げろとおゅしゃるのですか陛下」


そこに第三者の声が響く。


「ユアン!」

「マリアンヌ様の罪をエリーゼにかぶせよとでもおっしゃる気ですか」


温厚な宰相閣下が氷の瞳を向けていた。



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