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第六章
38.気丈な君~ロミオside
しおりを挟むマリアンヌとの事は精神的にキツイ物だっただろう。
だが、エリーゼはプラチナという立場上。
肩書もあるので最後までやり遂げなくてはならなかった。
「エリーゼ様。お辛いでしょうに、閉会式でもしっかりなさってますね」
「当然ですわ。この程度で動揺してもらっては困ります」
「貴女は本当に性格が悪いですね。清々しい程に」
「何とでもっしゃい」
あの後、エリーゼに悲しむ事も泣く事も許されなかった。
最初に叱咤したのはエカテリーナだった。
あの後警備員に二人は拘束され、トリアノン公爵と夫人も同行した。
本当はエリーゼの傍にいたかったのだろうが。
立場を優先しなくてはならなかったのだろう。
何よりエカテリーナの言葉は…
***
「下を向くのではありませんわ!」
「エカテリーナ様…」
「なんてだらしない表情ですの!」
「酷いですエカテリーナ様!」
サーシャが庇おうと前に出るも俺は彼女を止めた。
「ロミオ様!」
「サーシャ。待て」
確かにエカテリーナの言い方はキツイ。
だが今は、彼女の厳しさが逆にエリーゼには必要なのかもしれない。
「貴女はプラチナですのよ。今は表向きでも笑いなさい。背筋を伸ばしなさい。前を見なさい」
「エカテリーナ様…」
「すべてが終わったら愚痴でも何でも聞いてあげますわ。なんでしたら貴女の大好きな芸術品でも何でも好きな事をさせてあげますわ…だけど今は毅然とした態度を取りなさい」
彼女とてエリーゼの事が心配だろう。
だが、優しい言葉をかけるだけが優しさじゃない。
「貴女はプラチナであり、公爵令嬢です。そして不遇な扱いを受けている生徒達の希望なのです。貴女が道を閉めることで彼等の可能性を広げられる…貴女が可能性を壊す気ですの?」
「いいえ…」
「マリアンヌ様の事は今は考える必要はありません。万一何かあっても私がもみ消してあげます」
「堂々と不正を口にしましたよ」
「うむ、実に男らしいな」
「リオネル様は黙ってましょうね?」
「私は初めてエカテリーナ様が頼もしく思いましたわ」
皆好き勝手言っているが、エカテリーナだってエリーゼを心配しているんだ。
だがここで這い上がれなくなっては困る。
この中で一番厳しくできるのはエカテリーナだけだからだ。
そして導けるのも彼女だけだ。
「申し訳ありません。役目を全うします」
「それで良くてよ。後でやけ食いに付き合って差し上げますわ」
少しだけ妬けるが、彼女に感謝だな。
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