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第六章
35.精霊とは~春麗side
しおりを挟むあの状況で都合よく風の精霊が現れ手助けをしてくれたのは理由がある。
この国の方とは異なり私は龍神様の力を感じると同時に精霊以外の種族を感じ取ることができる。
「あの時、絶妙なタイミングで風の精霊が助けてくれました」
「はい…あの時強い風を感じました」
風の高位精霊の加護を待つシルビア様だからこそ連携を取れましたが、実はあの時に風の精霊以外の気を感じていたのです。
「ですが、あそこまでタイミングよく風の精霊が手助けしてくれたのには理由がありますのよ」
「理由…ですか」
「黒い炎が充満すれば多くの植物が燃えます。精霊は常に見ているのです」
どの国でも魔力が強ければ無条件に愛されると思っているでしょうけど、魔力がなくとも精霊の寵愛を受ける方は存在する。
高位精霊は寵愛を受けていても、道から外れる様な人間を何時までも愛さないし。
弱きものを虐げる程愚かではない。
「あの時マリアンヌ様が暴走して多くの人間を傷つける事を良しとするはずがありません」
「では…」
「精霊は加護を持つから愛するのではありません。真っ当に生きている人間を侮辱し痛めつけるような心を持ち合わせていないのです」
私達が思う以上に多くを見ているのですから。
だからこそ、彼女は加護を失った。
恐らく何度となく精霊はマリアンヌ様を説得したのかもしれませんわ。
「風の精霊や他の精霊が手助けしたのでしょうね。私には解ります」
彼等は私のように複数の精霊を完璧に察する察知の力は低い。
だけど私は違うから解ります。
「風の精霊が駆けつけやすい様に他の精霊が支援したのです。だからこそあのタイミングだったのでしょう」
「春麗様…」
「エリーゼ様、精霊はちゃんと見ておられますわ。魔力がある無し関係ないのです」
魔力があるから精霊に愛されて当然と言う傲慢な考えを持てば、本当に精霊の心は離れる。
だけどエリーゼ様は精霊や妖精の姿を見る事はなくとも彼等への尊敬の念を持って接していたからこそ名もなき妖精は救おうと動いた。
「魔力など人の価値を見出す物ではないのですから」
魔力で人を救えない。
傷ついた心を癒すのは魔力じゃない。
人が人を思う心。
その心を無くせば精霊の心は離れるのは当然なのだから。
「彼女の不運は人としての温かさ、思いやりを育てられなかったのでしょうね」
こうしてみると哀れだと思うけど。
だけど自業自得でもあるのだから。
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