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第六章
28.娘を追いかけて~ジリアンside
しおりを挟む学園祭でマリアンヌを注意する必要はあったけど、イズラも危険視していた。
いかに貴族派筆頭の侯爵家の息がかかっていると言えど、増長し過ぎている。
使用人として許される範囲を超えている。
「イズラは公爵家を侮っています。何か隠しているのかしら」
「確かに」
「通常ならありえない行動が目に余る。それ以上に、エリーゼを下に見過ぎだ」
どんなにぶっ飛んでいようとも、エリーゼはトリアノン公爵家の長女。
まだハイネが幼い以上は領地代行ができる立場にあるし、婚約者は宰相閣下のご子息なのに。
「何を隠しているのか解りません」
「だからこそ学園祭に行く必要がある。マリアンヌ一人だけならどうにかなるが…あの女がエリーゼに何かしないか心配だわ」
姉もイズラの態度に不安を抱いてるのでしょう。
私もあの女の得体がしれないわ。
「解りました」
ハイネとナタリーも午後から一般客として参加する予定だったけど。
いざ参加したら。
「エリーゼ!」
「落ち着くんだジリアン!」
またしても奇怪な行動をするエリーゼに私は頭を抱えた。
貴女は何をしているの!
そんな毛皮を着て、間違ってテイマーの貴族に見つかったら捕まるわ。
質の悪い輩に見つかる前に毛皮を脱ぐように言わなくては!
「母様!落ち着いて!」
「行くわ!」
「ちょっとジリアン!」
私から逃亡するエリーゼをようやく見つけたと思えば穴に入って行く。
まったくあの子は!
迷子になって抜けられなくなったらどうする気なのかしら。
「エリーゼ!」
必死で追いかけるも背筋が凍り付くような嫌な予感がした。
これは闇魔法?
いいえ、違うわ。
もっと強い、負の感情が増幅した。
「エリーゼ!止まりなさい!」
エリーゼの向かった先から感じる魔力。
けれど、私が止めることは出来なかった。
出口を見つけたエリーゼは穴から出てしまった。
そして私が見たのは、黒い炎を手に纏い、ランを睨みつけるイズラがいた。
なんて事を。
なんて姿になり果ててしまったのかしら。
イズラ。
けれど私に怯えている暇などなかった。
イズラは直ぐにエリーゼに気づき標的を変え、黒い炎をエリーゼに向けた。
「エリーゼお嬢様!」
ランの悲鳴が響く中、私は咄嗟に結界魔法でエリーゼの体を守った。
完全に防ぐことはできないけど、マシなはずと思いきや。
あの子は変なポーションを取り出し飲み干した後にとんでもない行動に出てしまった。
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