上 下
278 / 311
第六章

27.前夜の家族会議~ジリアンside

しおりを挟む




エリーゼがプラチナを賜って初めての大仕事。
私も緊張しながらも成功を祈ることにしたけど、当日は行くかどうか迷っていた。


「ジリアン、あの子の晴れ舞台を見に行こうじゃないか」

「そうよジリアン」

「ですが…」


私はここであの子の成功を見守ろうと思った。
お祭り好きのあの子の事だからまたおかしな勧誘をしたりしそうだわ。

私はその姿を見て怒ってしまう。

「旦那様、私は」

「君があの子を見て怒るなんて何時もの事じゃないか。誰も気にしないよ」

「そうよ。あの子の予想外の行動は学園でも暗黙の了解よ」

「二人共」

泣いていいかしら?
既に学園側でも許可が出る程あの子の行動は…。

いいえ、それもあの子の個性として受け入れなくては。
やり方は色々問題であるけど、いい方向に進んで来たのだから。


「ですが、当日はマリアンヌの監視を」

「それね…」

「こんなことは言いたくありませんが、学園祭は大事な行事です。万一学園祭で問題が起きればあの子の責任となります」


マリアンヌのこれまでの行動を思い出せば何もしないとは言えないのよ。
疑いたくないけど、既に私はあの子を信用できない。

大人しくしてくれればいいのだけど。


「陛下にはマリアンヌを退学させる事を伝えてあります」

「いい加減陛下も首を立てに振っていただきたいものです。マリアンヌの加護がそこまで必要かしら」

「聖女候補のサーシャさんがいるけど…マリアンヌも強い魔力。特に強い加護があるからね」


当初からマリアンヌを贔屓目に見ていた陛下や貴族派の貴族達。
その理由は女神の加護を持つ数少ない内の一人だからでしょうけど、既に聖女の資格を持つ光魔法を持つ少女が現れた。


サーシャさんは既にその才を開花させているわ。
だからいかに魔力が強くても彼女には敵わないけど、王家からすれば貴族令嬢が聖女である事の方が安定だと思っているのでしょう。


だけど…。


「既に南帝国からエリーゼへの対応を改めないならば考えがあると仰せですわ」

「当然ね。今まで散々エリーゼを見下して来て、いざ必要になったら利用して…その癖未だに間違いではないかと言ってエリーゼの功績を認めないのだから」

一番怒っているのはエリーゼを我が子のように溺愛している姉だった。


「私達は別に王族派じゃないのだから。はっきり言ってもいいのよ?」

「私が中立側を貫いて来たんだが…しかし、これ以上は許せないよ」


温厚な旦那様は派閥のバランスで苦しんでいる事は知っていた。
私達だけの問題ではなく、派閥のバランスが崩れたら政治にも影響を及ぼすわ。

中央が荒れたら地方の領地も影響が及ぶから大人しくしていたけど。


「最悪の事態は考えているし、準備もできている」

「幸いにも宰相閣下も同様にお考えくださっているしね」

私もそのつもりだわ。
何が最善か、そして答えは学園祭ではっきりすると思っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...