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第六章

25.無礼者~ランside

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アクシデントがあったものの、エリーゼお嬢様の機転の早さと独特な発想力のおかげでお店は大繁盛で、パンは完売になっても、パンの国の展示やパン教室は大盛況だった。


今日の日の為に手伝いにきてくれたパン屋の老夫婦もテイクアウト専用に小さなパンを作ってくれたおかげでパンが買えなかったお客様にも喜んでもらえた。


これもすべてエリーゼお嬢様のおかげだわ。

「ランさん、エリーゼ様はどうしてこうも素晴らしい案を思いつかれるのですか」

「本当に…魔力がなくとも立派で」

「私のお嬢様も尊敬しておりまして」


今現在私に話してくださっている方達は同じく使用人が在籍するクラスで、お嬢様にお仕えする辺境地出身の下級貴族出身の方達だった。


「お嬢様は幼少期の頃から他民族の文化を学ばれるべく、清の国にも留学されておりまして」

「やはり向学心旺盛なのは幼少期からだったのですね」

「私のお嬢様はお体が弱くて…とても」


十年前はエリーゼお嬢様が魔力が引く事で非難する方が多かった。
でも、領地持ちの貴族や辺境地に住まう貴族の皆様は友好的だったのだけど。

こうして学園の貴族の方々に受け入れられるのは嬉しい。


「ご令嬢はどのようなご病気なのでしょうか?私のお嬢様は医療に詳しいのでお力になってくださるかと」

「本当ですか?」

「私のお嬢様は食が細くて…どうしたら食事を召し上がってくださるかアドバイスをくださいませ」

「ちょっと!私が先よ」


どの方々もお嬢様の為に必死だった。


解るわ。

その気持ちが痛い程に。


他民族出身で貧しい生まれである私はずっと見下され罵倒を浴びせられて来た。
祖国でも辛い日々が多かった。

でも旦那様が私を雇ってくださり。
そしてお嬢様に出会って私は救われた。


お嬢様は純粋に私を慕ってくださる。

だからこそ答えたかった。
邸でも敵はいる中で私にできる事は少なかったけど。


でも、もうお嬢様を貶す者はいない。


もう――



「ラン!」


「え?」


背後から怒鳴り声が響いた。


「許さない!」

「えっ?イズラさん?」

「ちょっと!様子がおかしいわよ」

「何で黒い気を纏っているの!」


音もなく現れたのはイズラだった。


恐ろしい形相で私を睨み魔力を発動している。


「お前の所為で…お前とエリーゼの所為で!」

「お嬢様を呼び捨てにするとは!」


怒りで我を失っていてもお嬢様を呼び捨てにするなんてなんと無礼な!


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