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第六章
8.人外誑し~春麗side
しおりを挟むまさかあの方がエリーゼ様と一緒に来られるなんて。
予想の斜め先を行く方と思っていましたが。
「春麗様、あの方は何方でしょう」
「少々元気が良すぎますが、良い方ですね」
サーシャさんとスコットさんが誰なのか尋ねるけれど、驚かせてしまうのは明白だわ。
「あの筋肉、見事だ。是非とも筋肉の作り方を教わりたいものだ」
「リオネル…」
この頭まで筋肉馬鹿の貴族は知らないのね。
まぁ、彼は政治にはかかわってないなら知らなくても不思議でなないけど。
「あの方はブロード王国の王配です」
「え?」
「グレース女王陛下の夫にして、風の精霊の長です」
「は?風の精霊の長…」
人里離れた森に住まうエルフ族。
その中でも長寿でもあるエルフ族の長は国を築き、多くの精霊を従えている。
中でも風のエルフは大長寿とも言われている。
「そんな…まさか」
サーシャさんの反応は普通でしょうね。
エルフは基本人前に姿を見せる事は少ないし、ましてや地の精霊、風の精霊は自由過ぎるから人間に友好的じゃない。
「随分と噂と異なりますね」
「ああ、本当は気さくなのだな!」
呑気な事を言うわね。
噂は本当だし、私だって何度か謁見を賜ったわ。
「言っておきますけど、私の母も女王陛下には会えても殿下には合えませんでしたわ。人間を毛嫌いしているので」
「でも…」
「エリーゼ様だからでしょうね。あの方は人外に好かれる才能はピカ一ですもの」
いくら加護を持つ龍神のお使いでもないわ。
いいえ、エリーゼ様自身の天性の素質というのでしょうか。
「本人は自覚がないだろうが…」
「なんとなく想像できる自分が嫌ですわ」
「そうですね」
けれどいい方向に進んでいるわ。
私の眼力でオーラ―を見ると、二人の間に祝福が見える。
「うむ、これも美味じゃ。是非持ち帰りたい」
『だったら持ち帰り用に冷凍しましょう。一か月は持ちますよ』
「なんと!そんなことが可能なのか!」
うん、実に楽しそうね。
まさかエルフ族の長までもたらしこむなんて本当に恐ろしい人だわ。
「ああ…本当に眩暈が」
「エカテリーナ様!しっかりしてください!」
「今から開店の準備なのに倒れないでください」
「スコットさん、私は貴方が本当に嫌いですわ」
「嬉しいです。僕もです」
そしてこのメンバーも、中々の図太い神経ですわ。
本当に。
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