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第六章
5.パンの店
しおりを挟むお客様第一号となるお爺さんを連れて来ると春麗様がパンを運んでいた。
「エリーゼ様?」
『お疲れ様です』
「もうプラカードは必要ありませんわ」
毛皮を脱げと言っているようだけど、今日一日はマスコット役をするつもりだ。
『お客様第一号をお連れしました』
エスコートしているお爺さんを案内する。
「えっ…何故」
「すまんがお邪魔するぞ」
「はっ…はい。しかしその荷物は」
「戦利品じゃ」
二人は顔見知りなのかな?
なんというか親し気に見えるわ。
「戦利品…ですか」
「それよりパン作りをさせてくれると聞いたんじゃが」
「ですが、パンでして…お菓子ではございません」
「わしはパンが大好物なんじゃ。菓子よりもな?」
「そう…だったんですか」
どうやら春麗様はお爺さんの好物はお菓子と思っていたそうだ。
『お爺さん、私と一緒にスコーンを焼きましょう。その後はクロワッサンやバターロールを焼きましょう。楽しいですよ』
「エリーゼ様!」
「何?クロワッサンもあるのか…大好物じゃ!」
腕を捲ると何故か前世で有名だった仙人様を思い出す。
「エリーゼ戻ったか…え」
「遅かったですね…」
ロミオ様とエカテリーナ様がお爺さんを見て固まった。
「エリーゼ様、その方は」
『パトロールちゅに遭遇しましたのナンパして来ました』
「エリーゼ…」
普段のロミオ様ならしょうがないと言ってくれるのに、何故そんなに冷や汗をかくのか。
そうだ。
パン作りをするなら着替えをしないと。
『お爺さん!こちらをどうぞ』
「エリーゼ様ぁぁぁ!」
私は今日の日の為に用意した割烹着を差し出す。
「おお、懐かしいな」
『私とお揃いです』
「そうかそうか…」
白衣もあるけどサイズが合わないから可愛いフリル付きの割烹着を用意した。
これでパン作りに服が汚れない。
『パンを作りましょう』
「うむ!」
こうして私はお爺さんと一緒にパン作りに取り掛かる事になった。
けれど、この時私はまたしてもとんでもない人とお知り合いになっていた事など知らずにパン作りに精を出していた。
「どっ…どうしましょう」
「怪我がない様に見守るしかないだろ」
「そうですわね」
その間にロミオ様とエカテリーナ様、そして春麗様までも真っ青な顔色になっていた事に気づきもしなかった。
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