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第五章
33.異国の姫~マリアンヌside
しおりを挟む今朝から生徒が浮足立っていた。
噂によれば、清の国の皇族が留学して来たとか。
清の国なんて他民族なのに、そうしてこんなに騒げるのかと思った。
「清の国の南帝国は、四大帝国の中でも強い国と言われております」
「フーン」
「特に火の精霊の神、朱雀が火の精霊を従わせていると言っても過言ではないのです」
火の精霊の加護と言ってもそこまで重要視するものではない。
戦乱の世であれば攻撃魔法は重要視されるけど、戦争をしているわけじゃないならそこまで重要視する必要なんてない。
「聞けば女性が剣を持つと聞くわ。随分と野蛮ね」
「ですが、春麗皇女殿下は帝位を持つ方ですので」
「まぁ、利用価値はありそうね」
私の踏み台に利用するにはちょうどいいわ。
清の国でも、強い国で裕福だと聞くから私が使ってあげればいいのよ。
帝国の姫だとか言っても教養もない。
礼儀作法も解ってないような蛮族の姫に過ぎないのだから。
なのに――。
「聞きまして、春麗様のお噂」
「ええ、転入早々に騎士科の生徒の方から一本取ったとか」
「素晴らしいですわ。中間考査代わりの編入試験は学年でトップですって」
「ロッティー様と張り合えるほどだなんて」
教養もないと思った余所者は転入早々成績はトップで入った事で銅クラスでありながらも注目されていた。
「転入して日が浅いのに、優秀さを認められて生徒会に入る話も出ているそうですわ」
「ロッティー様とは勉学で競い、現在はエカテリーナ様と淑女の座を競う程らしいですわ」
最初は物珍しさだと思っていた。
噂が独り歩きしていると思っていたのに。
「お嬢様…」
「解っているわよ。心配ないわ」
イズラが心配そうにするも、顔を合わせれば私に礼を尽くすに決まっている。
「来たわね」
そうこうしていると廊下で彼女が向かって来る。
ふと視線が合ったから私に挨拶に来たのよ。
公爵令嬢である私へ挨拶するのが遅れたの事へのお詫びだとお、思った。
だけど――。
「は?」
「え?」
私を素通りしてそのまま通り過ぎていく。
「何で…」
「確かに目が合ったはずじゃ」
何故私に声をかけずに通り過ぎたの?
気づかなかったはずはないと思いきや。
「ごきげんよう春麗様」
「ごきげんようエリーゼ様」
私を素通りしてあの女に頭を下げ挨拶をしてた。
「何て事を…マリアンヌ様を無視して!」
「あの野蛮姫が」
最初から私に頭を下げたんじゃない。
あの女に頭を下げていたって事?
信じられない!
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