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第五章
32.負のオーラ―
しおりを挟む正式に留学という形で春麗様が転入することになった。
異国の雰囲気を持ちながらも背がすらりと高く気品が溢れている彼女は直ぐに学園のマドンナ的存在になった。
エカテリーナ様やサーシャとは異なる凛々しさを持つ美女で女子生徒は彼女の美しさに見惚れ。
「一本!」
「「「きゃあああ!」」
剣術の授業では騎士科の生徒を任せる程の腕前だった。
清の国の皇族は淑女教育の一環として剣術の稽古を幼少期から習うらしいが、これは嗜みで済むレベルじゃないわ。
「かっこいい…」
「ええ、私も見惚れてしまいましたわ」
同級生は勿論、既にファンクラブまでできる程すごかった。
容姿端麗成績優秀で運動神経万能と三拍子を揃っているのは生徒会のメンバーにもいるのだけど、春麗様は彼等以上に高貴さがにじみ出ている。
「お見事です。春麗様」
「この程度たいしたことはありませんわ」
相手は男子なのに既にバテバテなのに、汗もかかずにいるなんて。
「私は運動神経が悪いから憧れます」
「十年も鍛錬をしていればある程度はこなせます。ですが、私はエリーゼ様のように薬草を採取したり、多くの物を生み出す才能の方が羨ましいですわ」
「私?」
「剣術を扱える人間は星の数ほどいますが、物を生み出せるものはそんなに多くありません」
なんだかない物ねだりをしているみたいだわ。
でも、そうだと嬉しいな。
私達はお互いにない物を羨んでしまうけど、補い合える関係だと嬉しい。
「それよりも気になったのですが」
「はい?」
「遠くから貴女を睨んでいるあれが、例の方ですか」
視線を向けると、私を睨んでいる人物がいた。
遠目からだけど解るようになった。
「ええ」
「失礼ながら、彼女の魔力は随分とどす黒いのですね」
「何所からそんなものを」
何時の間にか取り出したのか、水晶玉を見せられた。
「この玉は我が帝国に伝わる玉でございます。この水晶玉から星を見て、生命力や魔力にオーラ―などを見ることができるのです」
「へぇー…」
「エリーゼ様の魔力は透明で美しいのですが…あの女の魔力は黒いのです」
「黒?」
マリアンヌのオーラ―は黄金だったはずなのに。
「あのように禍々しい魔力によりつくのは妖魔ぐらいではないかしら」
「妖魔…」
この世界には精霊の下に妖精が存在するけど、妖魔とは堕ちた妖精の事を意味している。
狂暴で凶悪で危険な存在と言われている。
「異質すぎます」
「そんな…」
ゾッと寒気のようなものを感じた。
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