上 下
233 / 311
第五章

32.負のオーラ―

しおりを挟む




正式に留学という形で春麗様が転入することになった。
異国の雰囲気を持ちながらも背がすらりと高く気品が溢れている彼女は直ぐに学園のマドンナ的存在になった。


エカテリーナ様やサーシャとは異なる凛々しさを持つ美女で女子生徒は彼女の美しさに見惚れ。


「一本!」

「「「きゃあああ!」」


剣術の授業では騎士科の生徒を任せる程の腕前だった。
清の国の皇族は淑女教育の一環として剣術の稽古を幼少期から習うらしいが、これは嗜みで済むレベルじゃないわ。


「かっこいい…」

「ええ、私も見惚れてしまいましたわ」


同級生は勿論、既にファンクラブまでできる程すごかった。
容姿端麗成績優秀で運動神経万能と三拍子を揃っているのは生徒会のメンバーにもいるのだけど、春麗様は彼等以上に高貴さがにじみ出ている。



「お見事です。春麗様」

「この程度たいしたことはありませんわ」

相手は男子なのに既にバテバテなのに、汗もかかずにいるなんて。


「私は運動神経が悪いから憧れます」

「十年も鍛錬をしていればある程度はこなせます。ですが、私はエリーゼ様のように薬草を採取したり、多くの物を生み出す才能の方が羨ましいですわ」

「私?」

「剣術を扱える人間は星の数ほどいますが、物を生み出せるものはそんなに多くありません」


なんだかない物ねだりをしているみたいだわ。


でも、そうだと嬉しいな。
私達はお互いにない物を羨んでしまうけど、補い合える関係だと嬉しい。


「それよりも気になったのですが」

「はい?」

「遠くから貴女を睨んでいるあれが、例の方ですか」


視線を向けると、私を睨んでいる人物がいた。


遠目からだけど解るようになった。



「ええ」

「失礼ながら、彼女の魔力は随分とどす黒いのですね」

「何所からそんなものを」


何時の間にか取り出したのか、水晶玉を見せられた。

「この玉は我が帝国に伝わる玉でございます。この水晶玉から星を見て、生命力や魔力にオーラ―などを見ることができるのです」

「へぇー…」

「エリーゼ様の魔力は透明で美しいのですが…あの女の魔力は黒いのです」

「黒?」

マリアンヌのオーラ―は黄金だったはずなのに。


「あのように禍々しい魔力によりつくのは妖魔ぐらいではないかしら」

「妖魔…」


この世界には精霊の下に妖精が存在するけど、妖魔とは堕ちた妖精の事を意味している。
狂暴で凶悪で危険な存在と言われている。


「異質すぎます」

「そんな…」


ゾッと寒気のようなものを感じた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく

矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。 髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。 いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。 『私はただの身代わりだったのね…』 彼は変わらない。 いつも優しい言葉を紡いでくれる。 でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。

処理中です...