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第五章

25.口は災いの元

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「お嬢様」


憐れみの視線を向けるラン。

「エリーゼ」

そんな目で見ないでロミオ様!


「こうなっては逃げ道はありませんわよ」

「そんなぁー!」

このまま私はどうなのる?

もしかして、人身御供にされるとか?
それともお供え物にされて、そして最後はミイラになるの?

「エリーゼ様、大いなる誤解をなさっていることだけはなさらないでください」

「え?」

「巫女様の役目は龍神様の言葉を賜ることや明蓮花を咲かせることです。決して贄等ありえません。そもそも龍神様は命を大事になさる方です」

「じゃあ、海に投げられたり、火炙りになったり、生き埋めには…」

「するわけないだろう」


生贄になるのではないと安堵したけど、実際何をすればいいのか。


「じゃあ何をしたらいいんですか」

「エリーゼ!もう少し慎重に…」


「引き受けてくれるのか!」

「はい」


清の国が危険な状態だと言われて黙っているつもりはない。
他国の問題であるかもしれないけど、龍神様が完全に消滅すれば祖国も無事で済まないのだから。

「でも私にできる事なんてほとんどありませんけど、お力になれるなら」

「ありがとうございます。このお礼は必ず…」

「いえ、結構です。私は官僚でもありませんし、あくまで友人を助けるという事にしてください。そうすれば政治的な問題はかからないですし」

「エリーゼ…そなたは」


元より文林様は私の趣味を語り合える数少ない友人だった。

友人が困っていて手を差し伸べないなんてありえないわ。


「正直私は政治の事は解りません。清の国と我が国の確執もあります…ですが、私は友人に頼みごとをされたと言う事にすれば陛下も文句は言えません。極秘で来られたと言う事は知られたくないのでしょう?」


現在四大大陸の一つである南帝国は強い力を持っている。

その一方で他国からは弱みを見せない事で警戒されている。

もしここで私が公に手助けをしたとなれば、恩を返せと言う輩が出てくるだろう。


文林様は国同士の諍いになりたくないし、私も嫌だ。




「お嬢様!ご立派ですわ」

「今回ばかりは俺も賛成だ」

普段なら最初にお小言を言うランも賛同してくれた。

ランも故郷が心配のだろうから当然かもしれないけど、政治的問題にならないようにすれば波風は絶たないわよね!


それに私にできることなんて少ないだろうし、穏便に済ませれば目立つ事もないはず。


そう思っていた私だが、自分で自分の首を絞め。

自らの行動がすべて裏目に出ているなんてこの時は知りもしなかった。


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